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社会保障が経済を強くする 少子高齢社会の成長戦略 (光文社新書)社会保障が経済を強くする 少子高齢社会の成長戦略 (光文社新書)
(2015/02/17)
盛山 和夫

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 日本の経済学者や財政学者はまじめにとりあっていないのかもしれないが、読んでみるとかなり異端。

 自分なりに納得できなかった部分。

(1)日本の年金制度は、鈴木亘氏が内閣府の報告書でも、相当世代間格差があり、1960年生まれぐらいから若い人は今の賦課方式でいうかぎり、損をするとの指摘がある。http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis290/e_dis281.pdf
 この世代間格差の問題があって、将来年金が維持できないのではないか、という批判が経済学者、財政学者から強く主張されていることに正面から応えていないと思う。これはプロ同士、そして、厚生労働省のきんと詳細なデータを公表して叡智を集めて検証すべきだと思う。

(2)巨額の政府債務について、国民の資産でもあるから心配ないという議論は昔からあるが、社会保障のように現世代で使い切ってしまう予算支出を、将来世代が若い、もしくはまだ生まれていない段階で使い切ってしまうという問題は解決できていないと思う。建設国債は将来世代のために財産を残すのだから、きっと将来世代も納得する使い道だといって、財政法で認められているのに対して、今の70代、80代への社会保障支出を将来世代が償還する赤字国債で手当することが本来適切とは思えない。本来は、現時点での世代間バランスを考えるべきだが、それは結局現在の生産年齢人口に高い税金を課すことになり、それができないので、将来の世代は意見を述べないことから、負担を先送りしているという面は否定できないと思う。

(3)社会保障であってもお金を渡して、消費につながるから経済政策上意味があるというが、本来所得移転は、経済政策上はニュートラル。ただし個別の地域をみれば、特に農山間地域では、社会保障で大都市から配分される年金や介護の支出は他の所得が少ない分、大きな割合をしめており、これをうまく、地域活性化につなげるという発想はありえるし、やるべきだと思う。しかし、マクロでみれば、その半分の原資である付加価値とそこからの税金はどこから生みだすのかといえば、それは社会保障ではなくて、純粋に、大都市での経済活動にほかならない。その意味で、社会保障自体が日本のマクロ経済で成長要因になるとは考えられない。

(4)国債の発行も低金利で大部分は国内で消化されているから心配ないという議論も、既に約1割が海外で消化され、今後、海外での消化が増えていくこと、世界中で実需を越えた資金循環が生じており、いつ、不足の自体で国債が売られ金利高騰するかわからない、不安定な金融事情であることをよく考える必要がある。この失敗を繰り返してきたからこそ、ドイツは憲法で均衡財政をうたい、メルケルはそれを今年度実現して国債発行ゼロで予算を組んで見せた。そこを心配ないかのような言説もミスリードだと思う。

(5)小生は、経済社会の安定と生活の安定のためには、低所得の若者、金融資産など資産を有しない高齢者などを社会的弱者に対して、幸福な生活を送れるだけの医療、介護などの社会保障システムをきちんと構築することは重要だと思う。しかし、それは経済成長に役立つためではなく、経済社会の安定のため不可欠だからと考える。そのためには、現在の若者もその社会保障システムが持続可能であることを得心できるよう、様々な観点から検証を行い、やはり今のママでは持続不可能なのであれば、現在の高齢者から給付を切り下げていくことも必要だと思う。これらの問題は、結局、詳細な情報開示と適切な経済成長の前提(3%とか高い成長率を前提にしないこと)、国民年金と厚生年金、共済年金のお金のやりとりを不明確にする基礎年金のような仕組みで事実上、厚生年金等で国民年金を支えるといった、受益と負担のはっきしない仕組みではなく、本来保険制度なのだから、ちゃんと受益と負担の関係を明確にしつつ、低所得の部分には、税財源をあてるなど、普通の議論を広くしてほしい。

 以上のコメントは小生は社会保障の専門でないので、感覚的かつ従来勉強してきた知識でコメントしたものだが、きちんとした、かつ、明朗でオープンな議論が、医療財政、介護財政、年金財政において行われることを是非お願いしたい。その結果であれば、高齢者も給付が減っても納得するし、勤労者たちも税金が増えても仕方ないと思う。

 開かれたオープンな議論と、国民へのわかりやすい説明を是非期待したい。社会保障は、学術会議とか議論してみてほしい大問題だと思う。
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経済の時代の終焉 (シリーズ 現代経済の展望)経済の時代の終焉 (シリーズ 現代経済の展望)
(2015/01/30)
井手 英策

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 なんで購入したか失念。もしかしたら新聞の書評だったかもしれない。

 自分は役所に入った時が中曽根民活で、自分の役人人生がずっと新自由主義的な思想にもまれ、翻弄されてきた。

 そこは同時代的に経験しているのでよくわかるが、その歴史分析は極めて的確。

 1990年代から財政支出の増大に苦しんでいた欧州のうち、特にスウェーデンでの年金改革など現金支出の削減の動き、ドイツのビスマルク型社会保障からの脱却のもがきの分析など、ひかるものあり。(p140~)

 今後の提言について、「土建国家レジームからの脱却であり、生活の防衛、不安の解消によって社会のつながりを生み出す」という方向性(p225)には納得感あり。

 しかし、その具体的な方向として、対象を選別せずに、普遍主義でいくべきとの主張にはあんまり説得力がないと思う。

 経済成長が鈍化するなかで配分する場合に、ゼロサムゲーム的になって富をもつ人から社会の底辺の人に再配分をするという厳しい政策を実施するときに、所得配分に関係なく、広く再配分を行う政策が、社会のつながりを増すとは思えない。

 むしろ、あまり所得が増えない、収益があがらない個人や法人から税金でむしりとって、配るのだから、本当に苦しい人、困っている人に配ってほしいというのが人情だし、そうでなければ、そもそもそんなことのために税金とらないでほしい、ということになると思う。

 もちろん、対象の絞り込みで社会の底辺の人が救えなくなってはいけないし、今のように高齢者に支援が偏って、非正規や職業につけない若者や母子家庭などにきちんと手当をすることは当然だと思う。

 「経済をかいならそう」という結語(p242)も、市場経済を全否定することはできないし、世界と競争する部分も避けて通れない、その中で、一定の所得を国民全体であげていきつつ、社会の底辺に暖かいまなざしと必要な支援を現物と現金の双方で行っていくというのがバランスのとれた考えではないか?

 慶応の経済の先生に経済社会学というグループがいるようなので関連しそうな参考文献をいくつか読んでみたい。

 参考文献『租税抵抗の財政学』(岩波書店)、『危機と再建の比較財政史』(ミネルヴァ書房)
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2035年の経済社会とイノベーション:超成熟社会発展の経済学Ⅱ2035年の経済社会とイノベーション:超成熟社会発展の経済学Ⅱ
(2014/11/21)
駒村 康平、齋藤 潤 他

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 『超成熟社会発展の経済学』の続編。これも慶応大学関係の本。

 イノベーションの分析は、マクロ、ミクロ経済学ともあんまり成功していないと感じる。

 シュムペーターの新結合は、(1)新財貨の生産、(2)新生産方式の導入、(3)新販路の開拓、(4)新原料供給路の開拓、(5)新組織の実現。(p23)

 その他、なるほどと思った点。

(1)ピケティがいうところの資本家と労働者の格差の長期的な拡大は、日本の場合には、ピケティ自身が説明しているとおり日本にはあてはまらない。(p6)

 日本はむしろ世代間格差の方が大きな問題。昨日よんだ「女性の貧困」のなかにも、若い女性が年金を期待していないとの記述があった。こんな不安があったら子どもも作れないと思う。

(2)福山リサイクル発電は、税金をつかわず、政策投資銀行のみずほの資金だけでたちあげ、既に借金を返済でしている。(p146)

(3)年齢別の人口10万人あたりの交通事故死者数は、1989年ぐらいまでは16歳から24歳の若者とほぼ同じだったが、若者の死亡数割合は急激に下がって他の年齢別交通事故死亡者と同じようになったtが、高齢者だけは高止まりしている。(p168)

(4)3Dプリンターはブームだが、今導入している企業はたぶん使い切れない。やっぱり使い切れないという話の次に本格的な利用が始まるはず。(p208)
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超成熟社会発展の経済学:技術と制度のイノベーションが切拓く未来社会超成熟社会発展の経済学:技術と制度のイノベーションが切拓く未来社会
(2013/10/30)
樋口 美雄、駒村 康平 他

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 役所の図書館で借りてきた。

 第一部が学者、第二部が実業界からの論考だが、実業界からの論考ががくっと質が落ちる。

 学者の論文では、斉藤潤さんの「日本のイノベーションシステム」がおもしろい。

 アダム・ボーゼン氏の説を使って現時点まで分析して、日本は研究開発費、特許数など、高度成長期から現時点にいたるまで大きな変化はない。しかし、その技術革新なり新しい技術が新しい産業や収益に結びつかなくなってきている。特にサイエンスと関係が深いバイオではアウトプットが弱い。また、サービス分野でのイノベーションがない、と指摘している。(p153)

 しかし、原因の分析はあいまいではっきりしない。サービス分野についてはなにか規制が原因なような記述になっているが、具体的な指摘はない。なんだろうか?

 実業界の論考では、トヨタの中川剛男さんが、海外工場の現地調達率を100%にもっていこうとしていること(p200)、亀田総合病院の亀田さんが、生活保護費の支給額3兆円の半分が医療費になっているのはモラルハザードだと指摘していること、混合診療を認めてほしいといっていること(p223,227)、大和ハウスの広瀬基紀さんが、サービス付き高齢者住宅は、市町村の介護事業計画と関係なく建てられること、土地を提供する者にも補助がでることから建設が進んだことを指摘していること(p246,260)が、ちょっと面白かった。

 タイトルからして、何かこの閉塞感ある経済構造の打開策があるのかと思ったが、それは過剰な期待だった。
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幸福度をはかる経済学幸福度をはかる経済学
(2012/09/11)
ブルーノ・S・フライ

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 確か、橘玲さんの本の参考文献。

 読んで、ものすごく惹きつけられた。ヨーロッパの複数国のアンケートのパネル調査と、ドイツ統一前後の分析などを通じて、幸福度が何に影響されるかを統計処理で分析した本。

 おもしろいと思った分析結果。

(1)幸福度と所得は正の相関関係があるが、所得がふえるにつれて限界効用が下がる。そして、先進国でも途上国でも同じ結果でその関係性は統計上頑健。(p41)

 これからの日本の地方では、所得が下がると幸福度が大きく落ち込む可能性があるので、それを維持する政策が重要だと思う。

(2)失業が幸福度の低下に与える影響が大きく、所得がなくなるだけでなく、自尊心や自己統制心がなくなといって心理的コストが大きい。(p62)また、失業率の上昇は社会全体の幸福度も下げる。(p67)

(3)スイスは州ごとに異なった直接民主制を引いているが、直接民主制の範囲が広いなどその程度が大きいほど、幸福度も高い。政治に参加できる権利があると幸福度が高まる。(p83)

(4)ボランティア活動は幸福度を高める。しかし、ボランティア活動が過小供給になっている(そんなに幸福度をたかめるのなら、なぜみんながもっとボランティア活動をしないのか?)の理由の分析は課題。(p107)

(5)結婚による幸福度は大きく上昇する。しかし、10年程度でかなり低下するが、もとに戻るわけでない。教育水準が同じ程度の場合結婚後の幸福度の低下は鈍い=結婚による幸福度が比較的維持される。(p114)

(6)迷惑施設や課税など自分に不利な政策でも、そのプロセスが公平であると感じられると、幸福度があまり下がらず、受け入れる傾向にある。(p144)

 これなど、都市計画の住民参加手続き充実の重要なimplicationだと思う。

 なお、著者は、幸福度研究の結果から、幸福度を表す指標を政策目標の第一順位にする(ブータン型)のは否定的。GNPなどの経済指標を目標としつつ、幸福度研究で得られた洞察を参考にして政策を立案することを提案している。(p199)

 なお、第14章で、アメリカのspecial districtのようなサービスに応じて様々な行政体が重複するシステムが、受益と負担の関係が一致して、幸福度があがるとして提案している。

 日本では新しい自治体をつくるのは地方自治法をかえないとできないが、とりあえずBIDとかTIFの制度を作って、地域負担で地域環境を維持する仕組みを導入するのが先決だと思う。

 これは、経済学の革新的な本だと思う。参考文献「日本の幸福度」(日本評論社)
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プロフィール

佐々木晶二

Author:佐々木晶二
現役国家公務員(現在研究休職中)です。
早朝、毎日、一冊以上の読書を目指しています。
今は、平日は、都市計画と東日本大震災関係の本を読んでいます。
休日は、海外情報、古典、歴史など、幅広く教養をつけるための本を読んでいます。

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