2010/12/30
川島真『近代国家への模索』を読みました。
近代国家への模索 1894-1925〈シリーズ 中国近現代史 2〉 (岩波新書) (2010/12/18) 川島 真 商品詳細を見る |
岩波新書の中国近現代史の第二巻。
これも、既刊の第一巻、第三巻と同様に、中国の歴史を丁寧に分析した好著。
この本は、日清戦争ぐらいから、辛亥革命ぐらいまでを扱っている。
全体を通じた理屈とか史観とうのものがないので、ごちゃごちゃした感じはするが、実際、ごちゃごちゃした事実の積み重ねなので、むしろ、事実を正確に記述する著者に好感を持った。
新たに知った事実。
①日清戦争後の遼東半島の三国干渉については、李鴻章は事前にしっていて、下関条約を結んでいた。(p10)
②日清戦争後の光緒帝による光緒新政では、近代化に伴う西洋への劣等感の裏返しとして、中国国内での中央、漢民族の優越感と周辺部への蔑視感が生まれた。(p77)
これは中華民国になってから特に顕著で、五族共和をうたいつつ、モンゴルや新彊、チベットでの紛争に結びついていく。(p146)
③第一次世界大戦のあとのヴェルサイユ条約は、日本の山東利権が含まれていたので、中国(当時の北京政府)は条約を締結せず、ドイツは単独で講和条約を結び、様々な不平等条項を撤廃した。
これが、その後の中国とドイツの軍事面を含めた友好関係の始まり。(p187)
上海事変のときに、ドイツの軍事顧問によるトーチカが築かれていたなど、シナ事変の際にドイツの影がちらちらする理由がわかった。
次のシリーズ本が楽しみ。