海岸保全施設の高さと復興まちづくりについて(法的視点から、私案) - 革新的国家公務員を目指してー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at the innovative official

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2013/12/18

海岸保全施設の高さと復興まちづくりについて(法的視点から、私案)

              海岸保全施設の高さと復興まちづくりの関係について

1 東日本大震災を踏まえた、海岸保全施設の高さの基準と復興まちづくり関係の制度の立案経緯について

(1) 重要な法令・通達等の発出時期は以下のとおり。

○平成23年6月24日、津波対策の推進に関する法律施行。この法律第13条第2項では、 国及び地方公共団体は、津波による被害の特性を踏まえ、津波により被害を受けた地域の復旧及び復興に当たり、当該地域の産業の復興及び雇用の確保に特に配慮するよう努めなければならないと規定されている。

○平成23年6月26日中央防災会議「東北地方太平洋地震を教訓にした地震・津波対策に関する専門調査会中間とりまとめ(注1)。以下の記述あり。
「一方、海岸保全施設の整備についてみてみると、これらは設計対象の津波高までに対しては効果を発揮するが、今般の巨大な津波とそれによる被害の発生状況を踏まえると、海岸保全施設等に過度に依存した防災対策には限界があったことが露呈された。」(p4)
「東北地方太平洋沖地震や最大クラスの津波レベルを想定した津波対策を構築し、住民の生命を守ることを最優先として、どういう災害であっても行政機能、病院等の最低限必要十分な社会経済機能を維持することが必要である。このため住民の避難を軸に、土地利用、避難施設、防災施設などを組み合わせて、ソフト・ハードのとりうる手段を尽くした総合的な津波対策の確立が必要である。」(p8)
「海岸保全施設等の整備の対象とする津波高を大幅に高くすることは、施設整備に必要な費用、海岸の環境や利用に及ぼす影響などの観点から現実的ではない。しかしながら、人名保護に加え、住民財産、地域の経済活動の安定化、効率的な生産拠点の確保の観点から、引き続き、比較的頻度の高い一定程度の津波高に対して海岸保全施設等の整備を進めていくことが求められる。」(p9)

○平成23年7月8日通知、農林水産省農村振興局防災課・水産庁防災漁村課・国土交通省水管理・国土保全局海岸室・港湾局海岸・防災課「設定津波の水位の設定方法等について」(注2)。記者発表資料において、以下の記述あり。
「現在、東日本大震災の被災市町村では復興計画づくりが進んでいますが、まちづくりの計画の策定のためには、復旧が行われる海岸堤防の高さ(天端高)が明らかになっていることが重要です。本通知では、痕跡高や歴史記録・文献等の調査で判明した過去の津波の実績と、必要に応じて行うシミュレーションに基づくデータを用いて、一定頻度(数十年から百数十年に一度程度)で発生する津波の高さを想定し、その高さを基準として、海岸管理者が堤防の設計を行うこととしています。

○平成23年9月28日最終報告、中央防災会議「東北地方太平洋地震を教訓にした地震・津波対策に関する専門調査会最終報告(注3)
→海岸保全施設の整備の考え方は中間とりまとめと同じ。

○平成23年10月21日発表、平成23年度国土交通省第3次補正予算の概要。以下の記述あり。「全面買収、かさ上げに補助する津波復興拠点整備事業の創設、防災集団移転促進事業に対する大幅な用件緩和、土地区画整理事業に対するかさ上げの補助対象化」

○平成23年11月16日提言、国土交通省「海岸における津波対策検討委員会提言(注5)」→平成23年7月11日の課長通知と内容は同じ。

○平成23年12月14日、津波防災地域づくり法公布。この法律の第10条によれば、市町村の定める推進計画において、海岸保全施設等の整備に関する事項、津波防護施設等の整備に関する事項を定めることとされている。

○平成24年1月6日、東日本大震災復興交付金制度要綱策定(注6)。→国土交通省分は、国土交通省第3次補正予算と内容は基本的に同じ。

○平成25年6月28日、災害対策基本法等の一部を改正する法律において、地区の避難計画や備蓄計画を地区単位で自主的にさだめ、それを地域防災計画に位置づける地区防災計画の制度が創設された(注7)。

○平成25年6月28日、大規模災害からの復興に関する法律公布。この第10条第2項において、市町村の定める復興計画においては都市施設としての防潮の施設、津波防護施設等を定めることとされている。

○平成25年11月29日公布された、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律においては、第12条において、市町村が定める津波避難対策緊急事業計画で、避難施設及び避難路の計画を定めるととともに、補助率を引き上げることとしている。

2 海岸保全施設の高さの基準と復興まちづくりの時期のずれについて

(1)平成23年3月11日の東日本大震災の発災後、平成23年6月の中央防災会議の専門調査会で、高頻度と低頻度の津波に分けて、高頻度の場合の津波については、海岸防災施設の整備の必要性を述べたのち、同年7月に国土交通省、農林水産省の課長通知によって、高頻度は数十年から百数十年に一度の津波については、海岸保全施設で対応し、それ以上の低頻度の津波については、地域防災計画、都市計画で対応するように通知している。

(2)この海岸保全施設の整備水準の事実上の地方公共団体の通知の段階では、市町村が実施する復興まちづくりの内容は不明であったが、10月21日の国土交通省の補正予算の記者発表において、防災集団移転促進事業の要件緩和、土地区画整理事業のかさ上げ補助などが明確化され、低頻度の津波について、復興まちづくり側で対応することが可能になった。

(3)この海岸保全施設の基準の通知と、復興まちづくり側の制度が固まる時期のずれから、海岸保全施設の基準については、防災集団移転促進事業等の復興まちづくりの事業内容の充実が反映されていない。また、復興まちづくりの事業内容が明らかになってからも、その内容に変更を加えていないことから、海岸保全施設の基準は、復興まちづくりの事業内容に左右されないものと海岸法を所管する国土交通省水管理・国土保全局、港湾局等は考えていると想定される。

3 海外防災施設の高さの基準についての課題

(1) 平成23年7月の農林水産省・国土交通省の課長通知においては、海岸保全施設の整備水準は、市町村の復興計画の与件として先に示されるべきものと整理されている。しかし、津波対策の推進に関する法律第13条第2項では、国に対して復旧事業においても、産業の振興と雇用の確保に特に配慮するよう求めていること、同年11月に制定された津波防災地域づくり法においては、市町村の推進計画において、海岸保全施設の整備に関する事項を定めることとされ、海岸保全施設の計画に一定の市町村の関与が認められていること、平成25年9月に制定された大規模災害からの復興に関する法律においても、市町村の復興計画に都市施設として防潮に関する施設を定めることができるとされていることからみても、新しい法制度下においては、海岸保全施設が「与件」で、市町村が定める復興計画が「従」 たるものではなく、相互に連携をとりあって計画を練り上げるものと考えるべきである。より、具体的にいえば、市町村や住民が地元の観光などの産業や漁業などの観点、景観などのまちづくりの観点から、より低い海岸保全施設を希望した場合には、十分、海岸管理者はその意見と調整すべきであり、一方的に海岸管理者の意見を強行すべきものではない(注8)(注9)。

(2) 平成24年1月に決定された東日本大震災復興興交付金制度要綱に基づけば、防災集団移転促進事業による低地からの高台からの移転、土地区画整理事業による盛り土事業の補助対象化、さらには漁業集落整備事業などによって、低頻度に対応した巨大津波に対しても、都市計画、復興まちづくりの事業によって対応することが可能であり、そのような計画内容になっている地区も多い。このような場合には、必ずしも高頻度(数十年から百数十年に一度)の津波に対しても、復興まちづくりと土地利用規制によって対応できているので、論理的にいって海岸保全施設が、高頻度の津波対応で必要ということにはならない(理屈上は海岸保全施設が不要な場合もありえる)。また、ほとんど人家の存在しない地域を対象にした高頻度の津波対応の海岸保全施設は、費用対効果という観点からも無駄といえよう。災害復旧事業は採択時事業評価を実施しないとはいえ、無駄な事業が進められていいということにはならない。

(3) 平成25年11月に成立した、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律においては、第12条において、市町村が定める津波避難対策緊急事業計画で、避難施設及び避難路の計画を定めるととともに、補助率を引き上げているといった、避難を中心の対策がとられている。これは、今後の災害予防という観点から海岸保全施設を整備する場合には、事業主体である都道府県が半額を負担することから、高頻度(数十年から百数十年に一度)の津波を前提とした高さの海岸保全施設であっても、整備の具体的な目処が立たないことから、まず、避難して人命を守るという観点から、避難のための政策に集中して施策の充実を図ったものである。これに対して、東日本大震災の被災地においては、災害復旧事業として海岸保全施設を整備することから地元負担がわずかで大部分の整備は、被災地以外の国民が負担することになる。東日本大震災の被災地以外においては、まず、命を助けるための避難を中心とした施策しか特別法で位置づけられていないこととのバランス(注10)からみても、東日本大震災の被災地においても、地域住民が避難活動で対応し、海岸保全施設の高さを低くしてほしいという要望であれば、海岸管理者は、かたくなに計算上の高頻度の津波に対応する高さの海岸保全施設に固執する必要はないと考える。このような場合には、地域住民の意向を踏まえて、災害対策基本法等の一部を改正する法律で創設された地区防災計画を定めることによって、避難を地域全体の意志として位置づけるとともに、海岸保全施設の高さを抑えることがありえるのは当然である。

(補注)
1) 以下のURL参照
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chousakai/tohokukyokun/pdf/tyuukan.pdf
2)以下のURL参照
http://www.mlit.go.jp/report/press/river03_hh_000361.html
3) 以下のURL参照
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chousakai/tohokukyokun/pdf/houkoku.pdf
4) 以下のURL参照。
http://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo05_hh_000073.html
5) 以下のURL参照。
http://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo03_hh_000429.html
6) 以下のURL参照。
http://www.reconstruction.go.jp/topics/20130322_youkou.pdf
7) 以下のURL参照。
http://www.minto.or.jp/print/urbanstudy/pdf/u57_03.pdf

8) 海岸法第2条の3第3項において、「都道府県知事は、海岸保全基本計画を定めようとするときは、あらかじめ関係市町村長及び関係海岸管理者の意見を聴かなければならない。」第5項において、「関係海岸管理者は、前項の案を作成しようとする場合において必要があると認めるときは、あらかじめ公聴会の開催等関係住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。」と規定しており、海岸法の観点からも、海岸保全基本計画を定めるときは、市町村の意見を聞くとともに、必要応じて住民の意見を反映させる措置を講じることとなっている。これを一段進めて、津波対策の推進に関する法律、津波防災地域づくり法の趣旨からは、より一層、地元市町村及び住民と、海岸管理者である都道府県知事は密接な調整が必要と考える。

9) 先に掲げた平成23年7月8日の通知においては、堤防の天端高は、(中略)海岸の機能の多様性への配慮、環境保全、周辺環境との調和、経済性、維持管理の容易性、施工性、公衆の利用等を総合的に考慮しつつ、海岸管理者が適切に定めるものであることに留意する。」と記載されている。また、平成23年11月16日の海岸における津波対策検討委員会提言においては、上記通知で掲げられた留意点に加え、「港湾及び漁港への利用者への配慮にも努めることが必要である。」と記述されている。これらの環境保全、周辺環境との調和、公衆の利用や港湾及び漁港の利用者への配慮をするためには、当然地元市町村及び住民の意見を尊重する必要があり、海岸管理者向けの通知等においてもそれらの必要性は認識されていると解される。

10) 現在の東日本大震災の被災地の復旧、復興事業は基本的に大部分が国費で実施されており、これは、被災地以外の国民が実質費用負担していると考えることができる。この被災地以外の国民に対しては、避難施設、避難路の整備を中心とした「逃げる」津波対策を制度的に前提にしながら、東日本大震災の被災地では、高頻度(数十年から百数十年)に一回の津波は海岸保全施設で食い止めるという「ハードで防ぐ」という事業を実施することについて、「均衡がかけているのではないか」 という問題意識である。これは、だからといって、全国をすべて「ハードで防ぐ」という趣旨ではなく、東日本大震災の被災地においても、ベースは「逃げる」津波対策を原則としつつ、地域住民の理解がえられ、費用対効果も高い地区については、ハードの対応も考えるといった、高頻度(数十年から百数十年に一度)の津波に対しても、ソフト、ハードの双方から検討するのが、東日本大震災の被災地と、被災地外との国民に対する整備の水準のバランスの取り方と考える。



















































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佐々木晶二

Author:佐々木晶二
現役国家公務員(現在研究休職中)です。
早朝、毎日、一冊以上の読書を目指しています。
今は、平日は、都市計画と東日本大震災関係の本を読んでいます。
休日は、海外情報、古典、歴史など、幅広く教養をつけるための本を読んでいます。

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