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2014/02/19

今回の雪害による放置自動車に係る法的論点について

2014年2月の雪害と道路上放置された自動車に係る法的論点について

1 まえがき
 2月14日未明から降り続いた降雪により、山梨県を中心にして、各地の高速道路、国道、都県道、市町村道において、除雪が間に合わず、多くの自動車が放置され、それによって、除雪が遅れたとの報道がなされている。この問題についての、法律上の論点について整理する。

2 道路法上の交通止めの権限

(1) 道路法第46条第一項において、「道路管理者は、左の各号の一に掲げる場合においては、道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、区間を定めて、道路の通行を禁止し、又は制限することができる。一 道路の破損、欠壊その他の事由により交通が危険であると認められる場合、二(略)」と規定されている。この規定により、積雪などによって「道路の状態が客観的に危険な状態が生じている」(道路法解説p311)場合には、道路管理者(高速道路会社、国土交通省、都道府県、市町村)は交通を禁止することができる。

(2) この第46条第一項の規定は、第二項において、道路監理員が、同様に交通を禁止することができると規定されている。

(3) 今回の雪害において、高速道路、国道、県道、市町村道において、多くの自動車が取り残されたのは、雪害のあった地域の道路管理者、道路監理員が、雪害の程度に応じて、柔軟かつ早期に交通禁止の措置を講じなかったことがその原因として考えられる。

(4) 今後、同様の問題を生じさせないためには、雪害の経験の少ない地域においても、交通規制権限を委譲されている出先機関(法令上は「道路監理員」)が、現地の判断で、かつ、一定の基準を満たした場合には、早急に道路の通行を禁止できるよう、事前訓練やマニュアルづくりを進めるなど、雪害に対する体制を整備する必要がある。

2 雪害によって道路上に放置された自動車の取り扱いについて(道路法上の権限)

(1) 道路法第67条の2の規定により「道路管理者又はその命じた者若しくはその委任を受けた者は、道路の改築、修繕若しくは災害復旧に関する工事又は除雪その他の道路の維持の施行のため緊急やむを得ない必要がある場合においては、道路に長時間放置された車両について、現場に当該車両の運転する者その他当該車両を管理について責任がある者がいないときに限り、当該車両が放置されている場所から距離が五十メートルを超えない道路の場所に当該車両を移動することができる。この場合において、当該車両が放置されている場所からの距離が五十メートルを超えない範囲の地域内の道路上に当該車両を移動する場所がないときは、自動車駐車上、空地、この項前段に規定する場所以外の道路上の場所その他の場所に当該車両を移動することができる。2 道路管理者は、前項の規定により車両を移動し、又はその命じた者若しくはその委任を受けた者に車両を移動させようとするときは、あらかじめ、当該地域を管轄する警察署長の意見を聴かなければならない。」とされている。

(2) 道路法第67条の2の規定においては、除雪を例示しているように、今回の降雪によって道路上に自動車が放置された場合には、この規定に基づき、道路管理者又はその委任をうけた者が、放置された自動車を除雪の支障のないように、移動することができる。

(3) 実際には、レッカー車による移動となるが、道路法解説によれば、「車両の移動をレッカー業者に委託する場合、道路管理者の職員が放置されていた場所で移動に立ち会う等、後日の紛争を防止し、又は紛争が生じた場合に備えて適切な措置をとることが必要となる。さらに、車両に新しい損壊箇所等、後日所有者等との紛争が予想されるような場合には、道路管理者の職員及び業者以外の第三者の立ち会いを求める等、後日の紛争を避けるような措置をとることが望まれる」(「道路法解説」p465)と記述されている。除雪のために自動車を移動する際にも、むやみに自動車を傷つけたり、損壊する必要はないことから、むしろ、丁寧で慎重な移動を求めており、穏当な解釈と考える。

3 雪害によって道路上に放置された自動車の取り扱いについて(災害対策基本法上の権限)

(1) 上記の道路法の規定のより一般的な障害物の除去の規定として、災害対策基本法第64条第2項で「市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、応急措置を実施するため緊急の必要があると認めるときは、現場の災害を受けた工作物又は物件で当該応急措置の実施に支障となるもの(以下この条において「工作物等」という。)の除却その他必要な措置をとることができる。この場合において、工作物等を除却したときは、市町村長は、当該工作物等を保管しなければならない。」という権限が市町村長に与えられている。

(2) この規定は、同法第64条第7項で、警察官、自衛官、海上保安官(以下「警察官等」という。)にも準用されており、警察官等も工作物の除去等が実施できることになっている。

(3) 災害対策基本法の解説書では、除却その他の必要な措置には「除去(移転、撤去)のほか、障害物を排除するために必要最小限度において行う破壊等の措置も含まれると考えられる。」とされている。また、「本項(第64条第2項)の規定により除却その他必要な措置をとった工作物等については、その工作物等が災害現場にあるものであること、災害を受けたものであること、障害となっているものであること、除去したものの保管規定があることから、損失補償の必要を認めず、補償についての規定はない。」とされている(「逐条解説災害対策基本法」p319)。

(4) この災害対策基本法第64条第2項及び第7項の規定は、災害発生時の障害物である工作物等の除却など行う一般的な規定であり、市町村長、警察官等が、必ずしも道路上に限定せずに、災害時に発生した障害となるさまざまな工作物等の除却その他の措置が可能となっている。しかし、法律の趣旨からいって、障害物の排除は応急措置に必要最小限に限られるのであって、有価物である自動車が積雪のために放置された場合には、当然、自動車をレッカー移動すれば足りると考えるべきであり、放置した自動車を破壊したり傷つけたりする必要性は全くないと考える。

(5) 一部の報道で見られるような、「放置した自動車に対して破壊などをした場合の損失補償の規定がないので放置自動車への対応が円滑に進まなかった」との指摘に対しては、そもそも除雪のためには自動車を移動すれば足りるのであって、仮に、除雪のために、放置した自動車を破壊した場合には、同法第64条第2項の規定の趣旨を超えた、むしろ違法な行為であり、国家賠償法による損害賠償の問題となると考えるべきである。なお、この場合であっても、国家賠償責任をおうのは、道路管理者である国、地方公共団体であって、実際に放置した自動車に対して除雪のため傷をつける程度の内容であれば、実際にその行為を行った公務員やその手足として除雪作業を行っていた除雪業者が求償されることは、国家賠償法で公務員への求償は故意重過失に限定されているので、ありえないと考える。

4 その他、検討すべき課題

(1) 雪害によって自動車が立ち往生するような状況を防ぐため、あらかじめ迅速に道路管理者が交通規制を行うことが必要だが、仮に、そのような状況が発生した場合には、平成25年6月に新設した災害対策基本法第51条の2の規定に基づき、内閣総理大臣が、国民に対して、「自動車を離れる際には、キーと連絡先を書いたメモを車内に残して、ドアをロックしないで退避してほしいと呼びかけることが重要と考える。

(2) 道路上の災害救助の対応について、除雪などの道路の啓開を行う道路管理者と、自動車に乗っていた人々への炊き出しなどの災害救助の主体としての都道府県、都道府県から災害救助の委任を受けている市町村との役割分担を事前に明確化して、災害救助のもれがないようにする必要がある。

(3) 雪害について、今回は、道路上の問題が大きく扱われたが、民有地での積雪に対しては、具体的な施策が存在しない。高齢者のみが居住する住宅の雪おろしなどを支援するボランティアなどへの政府や地方公共団体からの協力要請、その前提としての通常時からのボランティアとの協力体制の構築が重要である。また、高齢者のみが居住する住宅の雪おろしを行うボランティアへの資金的な支援も検討する必要がある。

(4) 限界集落などで孤立集落が発生する問題については、当面は、できるだけ道路の除雪を的確に実施することとし、中長期的には、よりまちに近い地区への集団的な移転ために、防災集団移転促進事業を予防的に実施するなど、限界孤立集落が発生しないための抜本的な予防措置に市町村が中心になって取り組む必要がある。

 追記:通常の除雪作業に伴い、道路法第67条の2の規定により、自動車を移動した場合に損失補償の必要がないことは、道路法第69条の損失補償の規定が適用されないことから、明文上も明らかである。同様に、災害対策基本法においても、第82条の損失補償の規定において、第64条第1項の工作物の一時使用、物件の使用及び収用は損失補償が必要なのに対して、同条第2項、第7項による障害物の除却そのた必要な措置については、損失補償の規定が適用除外とされていることから、明文上も、第64条第2項、第7項の障害物の除却その他の行為が損失補償が不要であることは明らかである。
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プロフィール

佐々木晶二

Author:佐々木晶二
現役国家公務員(現在研究休職中)です。
早朝、毎日、一冊以上の読書を目指しています。
今は、平日は、都市計画と東日本大震災関係の本を読んでいます。
休日は、海外情報、古典、歴史など、幅広く教養をつけるための本を読んでいます。

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