東日本大震災の復興のための用地取得と法律上の措置の必要性について - 革新的国家公務員を目指してー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at the innovative official

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2014/03/05

東日本大震災の復興のための用地取得と法律上の措置の必要性について

復興事業の用地取得を加速化するための措置について(私的メモ)

1 復興事業の用地取得の加速化についての議論の現状

 岩手弁護士会及び岩手県においては、土地収用法の特例となる特別措置法の制定を政府に要望している(http://www32.ocn.ne.jp/~iwate_ba/)。
 これに対して、政府は、法改正は必要ないとして、「用地取得加速化プログラム」を発表し、用地取得の運用上の改善を目指している(http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-15/20131021_youchi.pdf)。
 この運用上の改善については、いずれも的確なものと考えるが、ややテクニカルな面に偏っていることはいなめない。岩手県弁護士会が指摘しているように、復興事業のうち、防災集団移転促進事業及び災害公営住宅建設事業については、収用対象事業でないこと、それによって、強制的な買収ができないという点で法制面の課題は依然として残っていると考える。
 もちろん、土地収用法の対象としたからといって、用地実務のプロからすれば、地道な地元同意なしには復興事業の円滑化はできないという意見もあると思うが、東日本大震災の復興及び今後の大規模災害の復興という観点から、収用対象事業や収用手続きなど、岩手県弁護士会等が問題にしている論点について、現行憲法第29条の範囲のなかで、どこまでできるかについて、再検証する必要があると考える。
 なお、以下の提案は私の個人的見解で、復興庁や国土交通省とのすりあわせは一切行っていません。

2 収用対象事業の拡大の可能性

(1) 収用対象事業の範囲の法的根拠

 土地を強制的に公的主体が買い上げる(使用する)対象事業としては、土地収用法第3条に列記されている収用対象事業のほか、都市計画法第11条の都市施設、そして都市計画法第12条第2号の新住宅市街地整備事業、同法第3号の工業団地造成事業、同法第4号の市街地再開発事業のうち、第二種市街地再開発事業が存在する。

(2) 防災集団移転促進事業の住宅団地と公営住宅と収用対象となる公益性について

 現状では、防災集団移転促進事業の住宅団地(防災のための集団移転促進事業に係る国の財政上の特別措置等に関する法律第2条第2項で定義されるもの)と公営住宅(公営住宅法第2条第2号で定義するものをいう。)はいずれも収用対象となっていない。
 しかし、現行都市計画法第11条第8号においては、事業主体にかかわらず、復興時だけでなく平時において、「50戸以上の一団地の住宅施設
が収用対象となる都市施設に位置づけられていること、東日本大震災を受けて、都市計画法第11条の都市施設に、「津波防災地域づくりに関する法律に基づく、一団地の津波防災拠点市街地形成施設、さらに「大規模災害からの復興に関する法律に基づく、一団地の復興拠点市街地形成施設が追加されたことを前提にすると、災害の予防及び復興過程で危険な地域からの受け皿として造成される、防災集団移転促進事業の住宅団地、さらに、低所得の世帯に都道府県及び市町村が供給する公営住宅についても、追加された二つの施設と同等以上の公益性があり、都市計画法の都市施設として法律に規定することは可能であると考える。

(3) 都市施設に追加された場合の効果

 都市施設に防災集団移転促進事業の住宅団地(災害予防時と復興時を含む)及び公営住宅(復興時と平時の両方を含む)が追加された場合には、市町村の都市計画決定(都市計画法第15条)、都道府県知事の事業認可(都市計画法第59条)を経て、都市計画法第69条により、土地収用法の事業認定を受けたものとみなされる。なお、都市施設は、同法第11条柱書により、都市計画区域外においても都市計画決定することができる。

(4) 土地収用法の第3条の収用対象事業ではなく都市計画法の都市施設に追加する理由

 法制上は、土地収用法に追加することも検討しうる。
 しかし、現在の規定ぶりでは、面的な施設について、都市計画法の方が幅広く規定する傾向にあること、住宅団地などの面的施設については土地収用法の事業認定段階で個別に立地妥当性を判断する必要があり事業認定の運用が難しいこと、実務上も、復興過程においては、市町村が主導権をもって都市計画決定できる都市施設の方が現実に活用される見込みが高いこと(収用対象事業に追加した場合には、都道府県知事が市町村長の申請に基づいて事業認定することになる)、実際の体制としても、市町村、都道府県とも都市計画部局に人材が集まっていることから、都市施設を追加することによって、防災集団移転促進事業の住宅団地、公営住宅の収用対象事業化を図ることが適切と考える。
 また、都市計画事業認可は、都市計画決定した後、用地買収交渉前に都市計画事業認可申請をするのが実務上通常であり、用地買収交渉ののち、どうしても交渉がまとまらない土地について事業認定申請をする土地収用法の手続きの実態と比べても、都市計画事業認可の方が事業の円滑化という観点では優れていると考える。

3 都市計画手続き、収用手続きの改善の可能性

(1) 都市計画手続きの拡充の可能性

 大規模災害からの復興に関する法律第42条により、特定大規模災害等を受けた都道府県知事から要請があり、かつ、当該被災都道府県における都市計画に係る事務の実施体制その他地域の実情を勘案して必要があると認めるときは、国土交通大臣が都市計画決定をするという措置が創設されている。
 現在の東日本大震災の県の都市計画部局の体制を考えると、都市計画事業認可は十分行えると考えるが、今後の巨大災害に備えて、同様の要件で、都市計画事業認可についても、国土交通大臣が代行する規定を置くことが適切と考える。

(2) 収用手続きの改善の可能性
 都市計画事業認可を受けた後は、土地の権利取得、明け渡しは収用委員会の裁決をもって行うことになる。また、土地収用法第48条第4項但し書きに基づき、権利者が不明である場合には、不明裁決を行うことができる。また、土地の権利について争いがある場合などの裁決についても土地収用法第48条第5項に必要な規定が整備されている。
 このため、土地収用委員会による裁決の手続きが踏襲すべきと考える。(岩手県弁護士会の提案では新しい第三者機関をつくるとしているが、収用委員会の手続きは憲法第29条第3項の「私有財産は正当な補償の下に、これを公共のために用いる
、という趣旨を体現したものであり、また、実務上も裁決例が積み上がっていることから原則としてこの仕組みを活用することが適当である。)
 しかし、体制からみると、土地収用委員会事務局は、年間の裁決数が数件である県も多く、事務局体制も脆弱であることから、東日本大震災における用地取得案件を扱うためには、大幅な人員を他の都道府県や地方整備局の用地部から応援を仰ぐ必要があると考える。     
このため、東日本大震災以降の災害に適用するとされている、大規模災害からの復興に関する法律第53条の、都道府県の委員会から他の都道府県の委員会や国土交通省への職員派遣の要請等の規定を、東日本大震災までさかのぼって適用すべきである。
 また、今後の大規模災害を想定した場合には、収用委員会が早期に裁決を行うことができる、緊急裁決(公共用地の取得に関する特別措置法第20条と同じもの)及び、国土交通大臣による裁決の代行(同法第38条の2)の規定を整備すべきである。なお、国土交通大臣の裁決の代行は、公共用地の取得に関する特別措置法第38条の2の「収用委員会が一定の期間に裁決しない」という場合ではなく、都市計画の代行と同じく、都道府県収用委員会から代行の要請があり、収用委員会事務局の体制等地域の実情からみて必要な場合に限定すべきと考える。

4 財産管理制度の改善の可能性

(1) 不在者財産管理人制度及び相続財産管理人制度の現状

 復興事業を実施する地区において、対象土地の所有者が判明しない場合や相続人が不明な場合には、民法第28条及び第952条等に基づいて、利害関係人又は検察官から財産管理人の選任を家庭裁判所に申請し、その選任された管理人が土地の売却等、保存行為を超えた行為を行う場合には、再度、家庭裁判所の許可を受けて行うことができる。
 この制度については、実際の公共事業の現場では、財産管理制度の方が、土地収用委員会の手続きよりもむしろ迅速に行えるとの分析もあり、(http://www.skr.mlit.go.jp/kikaku/kenkyu/h23/pdf/12.pdf)、これらの制度についても拡充を検討すべきである。(岩手弁護士会の提言では、財産管理人制度は一切言及がないが、現実に動いている制度をより使いやすくするという地道な改正も必要と考える。

(2) 不在者財産管理人制度及び相続財産管理人制度の拡充の可能性

 この双方の財産管理人制度については、利害関係人又は検察官から管理人の申請を行うと規定しているが、実務上は、公共事業を行う国や地方公共団体も利害関係人と認められている。実務として、被災地の市町村の職員が管理人申請のためのすべての書類をそろえて準備することは大変であることから、利害関係人に、「復興事業を施行する国又は地方公共団体の職員」を明記すること加えて、「復興事業の全部又は一部を受託した、独立行政法人都市再生機構の職員又は地方住宅供給公社の職員」を明記することによって、市町村職員の申請書類の収集事務を、都市再生機構の事務所の全国ネットワークや、地方住宅供給公社の全国協議会ネットワークを活用して、戸籍謄本等の資料収集を可能とすべきである。

 また、都市計画決定した都市計画施設の区域内の土地について、不在者管理人及び相続財産管理人の選任の申し立て並びに土地売却にあたっての権限外行使の許可の申し立てがおこなわれた場合にあっては、家庭裁判所は「速やかに審判しなければならないと法律上明記するべきである。なぜなら、都市計画施設の区域内の土地については、都市計画法上、収用すべき緊急性のある土地であることから、家庭裁判所においても可能なかぎり迅速に裁決することが必要であるためである。
 また、家事事件手続法の特例として、独立行政法人都市再生機構等から不在者、相続人の状況や対象となる土地の現況等について書面等を受けた場合で相当と認めるときは、家事事件手続法第56条に定める調査及び証拠調べをしないことができるものとする。(特定競売手続における現況調査及び評価等の特例に関する臨時措置法第3条参照)

(3) 戸籍法の謄本請求権限の拡充

 財産管理人の選任にあたっては、不在者や被相続人の戸籍の入手が不可欠である。現行の戸籍法では、国又は地方公共団体の機関は、法令の定める事務を遂行するため必要がある場合には戸籍謄本等の交付を請求することができる(戸籍法第10条の2第二項)とされている。
 これに加え、上記(2)において、復興事業を受託した独立行政法人都市再生機構の職員及び地方住宅供給公社の職員(他都道府県の地方住宅供給公社が復興事業を受託している場合であって、当該地方住宅供給公社の職員から依頼を受けた他の地方住宅供給公社の職員を含む)も戸籍法の特例として戸籍謄本等の交付等の請求ができるよう、戸籍法の特例を設けるべきである。この場合には、独立行政法人都市再生機構及び地方住宅供給公社の職員には、当該戸籍謄本等に係わる守秘義務を法律で明記すべきである。

5 これらの法律事項を措置すべき法律について

岩手県弁護士会の提言では、東日本大震災復興特別区域法に各種の特例をおくことを前提にしているが、このような用地取得の円滑化のための措置は、東日本大震災の復興過程だけでなく、今後の大規模災害からの復興においても活用できるようにすることが望ましい。
 このため、「大規模災害からの復興に関する法律」において、必要な規定を整備することによって、今後の大規模災害に対応することができるようにするとともに、附則において、一部の規定については、東日本大震災においても適用ができるようにすべきと考える。

 追記:小口弁護士から指摘をいただいたように、不在者財産管理人や相続財産管理人は、本来、財産の保全のための保存行為を行うことが職務であり、特段の位置づけなしに、売却処分のような権限外行為の許可申請を自主的に家庭裁判所にう可能性は低いし、仮にした場合であっても家庭裁判所が許可するかどうかは一律にはいえない。
 このような財産管理人の性格を考えると、例えば、復興事業のために都市施設の都市計画決定がしてある区域内の土地について、復興事業の事業者(事業の受託者を含む)から、売却の申し出があった時には、当該財産管理人は、家庭裁判所に権限外行為の許可の申請をしなければならない、といった規定を創設する必要があると考える。
 また、当該申請を受けた家庭裁判所は、買収価格が適正なものであると認めたときは、売却処分を許可しなければならない、といった規定も考えられる。
 法律が司法機関である、家庭裁判所の判断をどれだけ縛れるかといった議論もありうるが、収用事業として最終的には強制的に買収できることが明らかになっている、都市施設の都市計画決定区域内であれば、財産管理人への権限外行為についての許可申請の義務づけ、家庭裁判所での判断事項を価格審査だけに限定するという法律改正事項もありうると考える。

追記2 最近の新聞報道では、土地収用対象事業に5戸以上の住宅経営を追加することと、緊急使用の期間延長をする議員立法が議論されている。小生は、上に記述したような法制度案を考えたが、第一歩として、立法府が素早くこのような形で収用対象事業を拡大する方向には賛成する。これで足りないものが現場ででてくれば、さらに制度改善を続けていくということが必要と考える。
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プロフィール

佐々木晶二

Author:佐々木晶二
現役国家公務員(現在研究休職中)です。
早朝、毎日、一冊以上の読書を目指しています。
今は、平日は、都市計画と東日本大震災関係の本を読んでいます。
休日は、海外情報、古典、歴史など、幅広く教養をつけるための本を読んでいます。

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