2014/07/24
野口悠紀雄『変わった世界、変わらない日本』を読んで、当たり前の指摘だがそれが通用しない日本の経済社会は困ったもんだ。
変わった世界 変わらない日本 (講談社現代新書) (2014/04/18) 野口 悠紀雄 商品詳細を見る |
極めて正統的な経済学者の意見。これが日本の経済社会で常識にならないから困るんだよね。
(1)EUの前身であるEECは、農業国フランスの利益のためのものだ。ドイツは政治的な理由から、これに従わざるをえなかった。ユーロとは、ドイツに鎖をつけ、強いマルクを引きずり下ろすための装置だ。ユーロは、リーマンショック後に問題を起こすことになった(位置No. 304-307)
(2)日米経済の差は、「価値の低い伝統的な企業」と「価値の高い新しい企業」の差なのだ。日本経済は依然として前者の企業に支配されているのに対して、米国の経済は後者の企業がリードしている。(位置No. 1164-1166)
(3)1単位の付加価値(雇用者報酬と営業余剰)に要する電気・ガス・水道の投入について製造業と金融・保険業を比べると、前者は後者の10・4倍だ。したがって、「産業構造を変えて電力需要を抑制する」とは、製造業の比率を低め、その代わりに金融業のような生産性の高いサービス産業の比率を高めることである。(位置No. 1992-1995)
(4)国債の返済能力を疑われた国の通貨が暴落した例は、70年代のイギリスとイタリア、97年の韓国やタイ、98年のロシア、2001年のアルゼンチン、08年のアイスランド等々、枚挙にいとまがない。 財政破綻とインフレ(そして通貨下落)は、同義語と言ってもよいほどいっしょになっている場合が多いのである。(位置No. 2242-2246)
(5)日本人が外国人を拒否するのは、「異質なものを排除したい」という感情があるからだ。「外国人であること、異質であること」だけの理由で拒否する。こうしたクセノフォビア(外国人恐怖症)的国民感情を変えることが必要だ。 そして、資本と人材を海外から導入することによって、旧システムの核心を破壊することを考えるべきだ。海外からのものは、異質だから破壊者になりうるのである。(位置No. 2725-2729)
財政危機は待ったなしの状況まで来ている。今までの製造業を中心とした古い生産性の低い産業から、生産性の高いサービス業など、新しい産業転換が迫られている。それは、変な産業保護や既得権の保護をやめて、世界経済の市場にさらされる中で生まれてくるもの。
一定のターゲットとなる産業を政府や役人が見つけて後押しできるものではない。
何度も失敗してきた成長政策の失敗を繰り返してはならない。民間の自由な競争と海外と対等に戦える人材を育てていくことにしか日本の活路はない。
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