阿部等『満員電車がなくなる日』を読んで、こういう鉄道のイノベーションを妨げているものってなにか、考える。 - 革新的国家公務員を目指してー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at the innovative official

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2014/09/05

阿部等『満員電車がなくなる日』を読んで、こういう鉄道のイノベーションを妨げているものってなにか、考える。


満員電車がなくなる日―鉄道イノベーションが日本を救う (角川SSC新書)満員電車がなくなる日―鉄道イノベーションが日本を救う (角川SSC新書)
(2008/02)
阿部 等

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 美濃部さんに紹介していただいた、阿部さんの本。

 大変刺激的で、かつ、挑戦的。

 大都市圏の満員電車の混雑は随分昔より統計上は緩和されてきたが、それでも小生が通っている田園都市線の池尻大橋、渋谷間など、混雑が非常にひどくて、毎日苦痛を個人的にも強いられている。

 その対策として、あげられているものは、とても説得力がある。

(1)運行技術のイノベーションの関係については、かなり鉄道技術的な側面が強いが、例えば、今の一定間隔ごとに電車がいることを確認して、居なくなったら前進するシステム(と僕は理解しました)を、GPSとか電車同士の無線など最新技術をつかって、もっと間隔を詰める話など、すぐにも取り組めそうな気がする。

 ホームの両側から交互に車両が発車できる仕組み(p55)など、いつも、渋谷駅の前でのろのろ運転になる田園都市線・半蔵門線の渋谷駅を改良すれば効果がありそう。でも、渋谷駅大改造中だけど、そういう話は聞かないな。
 
 なんでやらないのかな。東急電鉄?

(2)運賃のイノベーションは目から鱗。特に、通勤通学の定期を鉄道会社の自己負担で割引きさせていることや、通勤手当の支給分を収益から費用として落とせるようにしている法人税の扱いなど、が、ラッシュ時の集中を招いているという指摘は、合理的に考えるとそうだよなと思う。ちょっと、通勤手当や通勤定期がなくなると個人的には痛い感じがするけど、鉄道のラッシュ時集中を招いていることはいなめない。

 より、すぐに実践できそうなのは、追加料金を払って、着席できるシステム。ICカードをかざすと座席が下りる仕組みなど、技術的には簡単だと思う。(p116)確かに、着席料金と立ち乗り料金を分けた方が、金を払っても乗りたい人に課金して、いやな人は立つというのもありだと思う。

 もちろん、ラッシュ時に料金をあげて、通勤時間での乗車を分散するのも当然ありだと思う。ICカードなら簡単に対応できるし、今は通勤時間はほとんどICカードだから問題も生じにくいと思う。

(3)制度改革で、鉄道運転士の資格制度をバスなみにする(p135)もそうだなと思う。

 著者は触れていないが、上記の運賃イノベーションなどは、今の鉄道事業法の免許制度自体に係わる課題はないのか。運賃規制が運賃のイノベーションを妨げていないのか、気になるところ。

 ちょっと、わからなかったのは、大都市物流のネットワークに深夜の地下鉄ネットワークを使う提言(p150)。通常乗り降りする地下鉄駅で物資を移動することはできないので、別に物流用の駅をつくって地上にあげることになるけど、それって現実的なのか、よくわからない。

 物流システムは、倉庫のシステムを含めて、ものすごく今変化していると思っているが、新しいタイプの物流倉庫は圏央道のインター周辺に集中立地しているように、現状はトラック輸送を前提にしている。内航海運を受ける港湾とか貨物手雨同駅に現実にイノベーションが起きていないことからみても、これから貨物鉄道の物流に戻るというのは難しいのではないか。

 あと、交通の利便性が向上すると、人口減少に歯止めがかかるというのは、そうだといいなと思うけど、初めて聞く説なので、何か多少データでの裏付けがほしいなと思う。

 全体を通じて、とても刺激的。満員電車も鉄道会社のイノベーションで解決できる可能性を教えていただいて元気がでた。

 どうして、それが現実の鉄道会社に、あまり目に見えてでてこないのだろう。東京メトロとか、駅なかビジネスばっかり一生懸命で、ちっとも混雑緩和の本質的な努力をしないで、黒字を出し続けているように思う。そんなことなら、初乗り運賃さげろ、といいたい。

 あ、著者は運賃は低すぎる、経常的に経営を圧迫しているという主張でした。 
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ご指摘への回答

佐々木さん、お褒めと同時に多数のご指摘をありがとうございました。ご指摘を受けた11点に対して、私の考えを投稿します。

①GPSとか電車同士の無線など最新技術をつかって、もっと間隔を詰める話など、すぐにも取り組めそうな気がする。
⇒私の提案の中で総2階建て車両が絵になりやすく最初に注目され、「非現実的」との烙印を押されがちですが、最優先で取組むべきは「信号システムの機能向上による増便」です。
http://www.LRT.co.jp/130910tokyo/Olympic.doc
JR・メトロ・都営・大手とも前例がないと実行しようとしないので、ゆりかもめのピーク時200秒おき(1時間にわずか18本!)を60秒おき(1時間に60本)に向上させれば、各鉄道とも雪崩を打って取組むと予測しています。

②ホームの両側から交互に車両が発車できる仕組みなど、いつも、渋谷駅の前でのろのろ運転になる田園都市線・半蔵門線の渋谷駅を改良すれば効果がありそう。
⇒それには線路とホームの両方を増設しなければならず大投資です。上り線の進行左側にホームを増設して左右同時に乗降させれば、停車時間を大幅短縮できます。山手線の渋谷、銀座線の新橋と日本橋は利用増に応じてホーム増設し、大江戸線の勝どきが工事中です。いずれも左右同時乗降はしていません。

③通勤手当の支給分を収益から費用として落とせるようにしている法人税の扱いなど、が、ラッシュ時の集中を招いているという指摘
⇒民は官が作ったルールの下で自分自身にとっての最適行動をします。新築住宅への優遇制度により空き家が膨大に発生するのと同じ構造です。民は責めるに当らず、官がルールの役割終焉性に気付いて改めるべきで、その際は適正な激変緩和措置も要します。

④すぐに実践できそうなのは、追加料金を払って、着席できるシステム。ICカードをかざすと座席が下りる仕組み
⇒これには、公平性を担保できるといった表層的な事象以上の大きな社会的意味があります。高サービスに対する個々の利用者の費用支払い意思を集積したものが便利に鉄道を使いたいという社会のニーズであり、着席割増料金はまさにそれです。それを徴収しない現状は、鉄道の活躍の芽を摘むことそのものであることに皆に気付いてもらいたいのです。需要曲線と供給曲線の交差点より低い価格とすれば、当然の帰結として需要に対して供給が不足しそれが満員電車という、極めて単純な構造です。

⑤ラッシュ時に料金をあげて、通勤時間での乗車を分散するのも当然あり
⇒20世紀の紙の時代は、確かに実行するには費用対効果が見合いませんでした。21世紀のICカードの時代に実行できない(しない!)理由は見当りません。

⑥鉄道運転士の資格制度をバスなみにする
⇒これが実現できたら(技術的に実現できない理由はない!)、鉄道の風景がガラッと変わります。信号システムの機能向上と相まって、静岡・浜松に最速で行けるひかりが1時間おき、スカイアクセスが40分おき、南武線の快速が30分おき、埼京線と横浜線の快速や都営新宿線の急行が20分おきなどということがなくなります。都市間鉄道は軒並み値下げでき(特に立席)、鉄道と競合する高速バスなど全く成立たなくなります。地方鉄道は蘇り、LRTはどんどん実現できます。アベノミクスの3本目の矢の成長戦略を実現する規制改革のトップに持ってくるべきほど大きなインパクトがあります。

⑦上記の運賃イノベーションなどは、今の鉄道事業法の免許制度自体に係わる課題はないのか
⇒P113~114に1節を取って解説しました。規制改革は一切不要で、鉄道事業者がやる気を持ちさえすれば実行できます。

⑧大都市物流のネットワークに深夜の地下鉄ネットワークを使う提言、貨物鉄道の物流に戻るというのは難しいのではないか。
⇒地下鉄ネットワークを使うのは深夜のみでなく終日で、人の移動は地上と高架を基本とします。今すぐできることとしても、信号システムが現行の低機能のままでも朝ラッシュ以外は全路線で線路容量に余裕があり、旅客サービスを落さずに貨物列車あるいは貨客混合列車を運行できます。地下鉄以外のJRも民鉄も同様です。もっと言うなら、盆暮れ正月・GWの特定時間帯以外の新幹線で貨物輸送をしないことも甚だもったいないことです。いずれも鉄道と道路を繋ぐターミナルの整備を要しますが、路線そのものの整備と比べたらはるかに低額で可能です。
鉄道貨物を社会で活躍させる上でも、鉄道運転士の免許制度の規制改革は大きな鍵を握ります。自動車貨物が低コストなのは、トラック運転手が低賃金・過重労働を負っているからです。トラック運転手と鉄道運転士の賃金水準・労働条件を同レベル(後者を前者レベルまで厳しくしろとは言いません、両者の中間に適正レベルがあるはず)とできたら、物流の鉄道と自動車の分担がどうなるか想像してみて下さい。そして、中小運送会社とトラック製造メーカーの大半は経営が成立たなくなるので、鉄道分野への業態移行や雇用転換がスムーズに進むよう政府が対処しなければいけません。

⑨交通の利便性が向上すると、人口減少に歯止めがかかる、データでの裏付けがほしいなと思う。
⇒明治維新以降の交通利便性の向上と人口の増減そのものが裏付けデータです。明治維新以降60年毎に、日本の人口は3000万人→6000万人→1.2億人と倍々ゲーム、東京圏の人口は300万人→1000万人→3000万人と三倍々ゲームでした。そして、人口増の頭打ちから低減と交通利便性向上の停滞は見事に符号します。物事の“因”と“果”の関係をどう捉えるかで評価が全く異なりますが、私は、これからの時代に鉄道屋が頑張って鉄道の活躍度を高められれば人口減を増に転じられる、高められなければ人口減のまま日本は三流国に成下ると信じて、前者とすべく全力投球する覚悟です。

⑩全体を通じて、とても刺激的。満員電車も鉄道会社のイノベーションで解決できる可能性を教えていただいて元気がでた。
⇒以下にて「東京の鉄道は、批判を覚悟であえて申し上げると1970年頃の技術レベルとサービス水準です。」と答えました。鉄道はイノベーションの宝庫で、伸びしろが膨大にあるということです。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130625/250149
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130625/250198

⑪著者は運賃は低すぎる、経常的に経営を圧迫しているという主張
⇒低運賃は、経営を圧迫しているというより、鉄道の活躍の芽を摘んでいるということです。鉄道事業者は、低運賃を前提に経営をするだけのことで、鉄道事業は参入障壁が高く競合が出現して経営を圧迫されることはなく、鉄道が生み出す集客力・ブランド価値・信用力をバックに駅ナカビジネスに精を出せばよいわけです。鉄道が本来持つ能力を発揮できないことは甚だもったいないことで、それは人口低減圧力にもなっているというのが私の見立てです。私には満員電車を放置していることを筆頭に能力を出し惜しみしている鉄道事業者を非難する考えはなく、現行の鉄道事業者の行動様式は鉄道事業に儲けを認めない人々の意識の裏返しだと捉えています。貨幣とは社会資源の配分を適正化する調整弁で、市場機構と政府による徴税・財政支出を通して資源配分を適正化できた国家・人類ほど国際競争力を持ち繁栄を享受できます。「鉄道を低運賃から脱却させることが日本を繁栄に導く」と話したら、多くの人は違和感を持つでしょうが、11項目もこれだけ詳しく書いたらご賛同願えるでしょうか。

満員電車がなくなる日

『満員電車がなくなる日』へ関心をお持ち下さった方は以下をご覧下さい。
http://www.LRT.co.jp/18man-in
http://astore.amazon.co.jp/lightrail-22/detail/4827550298
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プロフィール

佐々木晶二

Author:佐々木晶二
現役国家公務員(現在研究休職中)です。
早朝、毎日、一冊以上の読書を目指しています。
今は、平日は、都市計画と東日本大震災関係の本を読んでいます。
休日は、海外情報、古典、歴史など、幅広く教養をつけるための本を読んでいます。

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