ジョナサン・スタインバーグ『ビスマルク 上下』を読んで、19世紀のドイツの国情把握には好著。この知識が現在のドイツ分析にも不可欠。 - 革新的国家公務員を目指してー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at the innovative official

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2014/09/06

ジョナサン・スタインバーグ『ビスマルク 上下』を読んで、19世紀のドイツの国情把握には好著。この知識が現在のドイツ分析にも不可欠。


ビスマルク(上)ビスマルク(上)
(2013/08/30)
ジョナサン スタインバーグ

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ビスマルク(下)ビスマルク(下)
(2013/08/30)
ジョナサン スタインバーグ

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 ライフネット生命の出口さんの推薦。

 上下で800ページもあるが、読みやすい。

 米国の歴史学者による本。英語の本が2010年にだされているから、最近の本。

 ビスマルクの描き方は厳しめと思う。心気症を患い、ウソをつく、陰謀をめぐらす、ドイツ帝国の独立、そしてその後の半独裁的立憲議会主義を守るために、いつでも敵と味方を使い分ける、など、性格面での批判が多い。

 しかし、政治家が結果がすべてで、いわばマキャベリストであることの証明でもあるので、個人的には、あまり、家庭内のもめごと、皇帝妃とのもめごとなどに力を入れて分析するのはどうかと思う。

 むしろ、ビスマルクがそのカリスマ的で個人に権力を集中して、プロシア王国の権威と軍事力を高め、諸邦を取り込みながら、オーストリア、ロシア、フランスとの戦争をすべて勝ち、ドイツ帝国を統一できた、当時の社会状況で改めて知る事項が、いくつかあり。

(1)プロシア王国は、ユンカーという農場主であり、貴族である、保守的な層がプロシア王国と軍隊の将校制度を支えていた。ビスマルクは、この階級の出身であり、この階級の利益を体現する形で政治を行った。しかし、自由主義的な動きについても、反応をして、十分に抵抗しながらも、ユンカーの特権を削減する政策をとったこと。

(2)ユンカーはいわば古い経済体制を体現していて、自由主義経済や金融経済は、ユダヤ人が握っていた、支配力をもっていた、とユンカーは考えていた。そのため、19世紀からすでに、保守層は、反ユダヤ的な行動を繰り返していた。ちなみに、ビスマルクは、心情的には、反ユダヤ的な感情を持ちつつ、徹底した反ユダヤ主義はとらずに、シナゴーグの完成式に出席したりと、融和的態度と強行な態度を使い分けた。

(3)ルターがでて、プロテスタントの考え方が強いドイツでも地区的にカトリックが強く地区もあり、当時のドイツ議会は反カトリックとカトリックという宗教対立があった。これについて、ビスマルクは、当初はカトリック教徒が中心となった中央党やカトリック司教に対して弾圧的な態度をとったが、政治的に必要であれば、中央党や教皇庁との妥協や和解を行った。

(4)外交面では、ドイツ帝国は孤立するおそれが常にあったが、ビスマルクは、スターリングラードに大使として駐在した経験を活かして、ロシアとの協調関係、そして、オーストリアとの協調関係を保って、3皇帝会議などを行う、さらには、イギリスとも融和的な関係を維持するなど、フランスに対して敵対的な姿勢を維持しつつ、ドイツが孤立しない外交策を、脅し、陰謀や秘密協定などを職人的な交渉術を駆使して、培ってきた。しかし、ビスマルクが退陣したのちは、むしろフランスがロシアを結びついて、ドイツが孤立して、第一次世界大戦に追い込まれたのは歴史が示すとおり。

(5)ビスマルクを支えた、1888年にウイルヘルム一世が死亡し、その息子の皇太子フリードリヒ三世は皇帝就任後3ヶ月で死亡し、孫のウィルヘルム二世の代になって、ビスマルクが苦心して築いてきた半独裁制的な立憲議会主義が、その皇帝の独裁的権力によって、ビスマルクを事実上解任し、そして、ビスマルクのような才能を持つ、側近を持つことができなかった、ウィルヘルム二世は、ドイツの孤立を導いていく。その意味で、世襲の王家に権限を集中する半独裁的な制度は、君主が愚鈍であると、一気に崩壊する。

(5)ビスマルクの議会を軽視した、皇帝と行政主体の密接な連携による政策の結果としての成功は、ドイツ国民の意識から、政治はプロにまかせて置けば良いとい受け身的な意識を植え付け、それが、第一次世界大戦後のドイツの混乱と、ヒットラーの台頭につながった、というのが筆者のみたて。

 ほかにも、ドイツの諸邦をまとめるために、諸邦がもっともいやがる普通選挙制をむりやり導入したビスマルクが普仏戦争語は、その議会の予算や軍事、宗教などの超保守的な立法を通すのに苦労したことや、自由主義左翼を圧迫するために社会保障制度や雇用保険制度をビスマルクが提案したなどという、闘争を勝利するためにビスマルクが導入した制度が、結果として、その後のドイツの民主的な制度として定着したという逆説もおもしろい。

 ドイツは一つでないんだな、いろいろな宗教的対立や経済的な対立を内在しているから、今でも連邦制を維持しているのがよくわかる。その意味でも、一読をお勧めします。
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プロフィール

佐々木晶二

Author:佐々木晶二
現役国家公務員(現在研究休職中)です。
早朝、毎日、一冊以上の読書を目指しています。
今は、平日は、都市計画と東日本大震災関係の本を読んでいます。
休日は、海外情報、古典、歴史など、幅広く教養をつけるための本を読んでいます。

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