国土交通省の本屋の棚でみつけて、なにげなく購入。
最新のフランスの都市計画制度の状況がわかり、貴重。しかし、比較対象とする日本の都市計画制度に誤りがあるのは残念。また、フランスの都市計画制度も万全ではないはずなので、フランスの課題も整理しておいた方がよかったと思う。
あれっと思った点。
(1)日本の中心市街地のように店舗の駐車場を規制すると、消費者はますます郊外の大型店にいってしまう。(p41)
日本の中心市街地の店舗は、駐車場法と大店立地法で、最低限の駐車場の設置義務を二重にかけていて、駐車場の数を低くする規制はしていない。著者の事実認識は誤り。
ただし、公共交通を導入するために、むしろ駐車場の設置台数を減らすべきという考え方はあり、自分も総合的な都市交通体系の中での一つの手法だと思う。
(2)ディジョン市では、トラムの周辺の高密度化のため、高さ制限、壁面の位置制限、容積率を廃止している。(p42)
本当かな。よほど開発需要がないところでないかぎり、めちゃくちゃな街になりそう。なにか、コントロールの仕組みが別途あるのではないか。
(3)日本の都市計画区域マスタープランは、策定主体も決まっておらず、また住民手続きもない。(p80)
全くの誤解。都市計画法第15条でちゃんと都道府県が決定すると書いてある。また、都市計画なので、公告縦覧や利害関係人の意見提出など、普通の都市計画として、住民手続きも規定している。
(4)地区計画は七つのメニューがあり、地方公共団体が地域の実情に応じて自由に地区の整備を行うことができない。(p183)
これもやや誤解に近い。むしろ、従来分かれていた、再開発地区計画とか住宅地高度利用地区計画などを全部まとめて一つの地区計画にしている。受けの建築基準法の規定を法律上かき分けるために、なんとか型と称しているが、それ自体はメニューというよりは同時に複合的に使うことができるもので、むしろわかりやすいように、運用上、街なみ誘導型とか名前をつけているだけにすぎない。これはいわゆる別々の制度として複合的に重ね合わせて使う、という意味でのメニューではない。
ちなみに、著者の批判の点はずれているが、上記の指摘された点について課題がないのではない。
都市計画区域マスタープランは、柳沢提言にあるとおり、一市一都市計画区域だと存在意義がないので、都市計画区域ごとではなく、かつ都道府県全域を対象にした県都市計画マスタープランにすべき。
また、地区計画については、計画事項の限定が使いにくい。例えば、京都の町屋などは防火、準防火などをはずして独自条例で耐火性能を規定しているが、これなどは、構造などを地区計画に規定すればもっと楽に対応ができるはずう。建築確認ともリンクできる。
とてもいい本なのに、ちょっとおしい。
参考文献、『コンパクトシティ再考』(学芸出版社)
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