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2014/10/29

青山吉隆ほか『LRTと持続可能なまちづくり』を読んで、政策目的と政策目標を明確にして議論する


LRTと持続可能なまちづくり―都市アメニティの向上と環境負荷の低減をめざしてLRTと持続可能なまちづくり―都市アメニティの向上と環境負荷の低減をめざして
(2008/03/30)
青山 吉隆、小谷 通泰 他

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 富山のLRTが営業を始めたころの本。ちょっと古いが、LRTに関する論点が網羅的に説明されている。

 本を通じた全体的な印象は、「公共交通」という土俵から議論をしていると思う。しかし、本来、公共交通は、人に対する移動サービスを提供する手段にすぎない。もう少し、大きな枠組み、例えば、地域住民の生活環境という枠組みから議論を展開する必要があると思う。

 そういう大上段の議論からすると、LRTのメリットとして、まず環境負荷の議論はLRTが圧倒的に有利かどうかあやしい。自動車がガソリンを大量に消費して大気汚染をまき散らしていた時代から、ハイブリッド、天然ガス車、電気自動車とそれ自体が環境負荷が小さくなってくると、今のように原子力発電が止まっていて、大部分を火力発電でまかなっている系統電力から電力を供給されているLRTが有利かどうか、わからない。

 都市アメニティという議論も、都心部のトランジットモール化とかなんとなくLRTになじみやすいかもしれないが、金沢市で
やっているようなバスとトランジットモール(p147)もありえるので、LRTだけ特に有利とも思えない。

 中心市街地の活性化にいたると、有名なストラスブールでもその効果ははっきりしていないという報告もある(p179)し、実際に図っているのが歩行者数ぐらいだが、正面切って、商店の売り上げ推移のデータが全くないことからみても、かなりあやしい。そもそも、通常の中心市街地の活性化の議論からすれば、店舗なり商業施設の中身がいかに人を引きつける中身と特徴を持っているかが、中心市街地の活性化のまず決めてで、それを支える交通機関は鉄道駅なのか、軌道の停車場なのか、バスの停車場なのか、自動車の駐車場なのかは、一概に決められないと思う。

 この本のp156以下のコンパクトシティの議論は、コンパクトシティを実現するためにLRTが有効かどうかもよくわからないし、そもそもコンパクトシティという概念自体が政策目的がはっきりしないので、何を何のために議論しているのかわからなくなる。

 都市財政へのインパクトの観点が、残念ながら一番わかりやすく、重要だと思う。都市財政は、市民、住民の生活環境を支える上で、これから福祉やインフラの維持管理など重要性が増す一方で人口減少、特に生産年齢人口が減少して税収がへってしまうという厳しい側面にある。これに対する負荷を小さくしつつ、市民、住民の生活環境を守るという観点からは、より持続可能な交通システムを様々な交通手段、さらには、公共交通システムの枠を越えて、運送会社などのよる買い物支援やNPO法人などによる福祉有償運送など、住民が自ら逆に移動しなくても生活環境が維持できる住民サービスなどを総合的に比較検討して、見通しをたて、暫定的でも計画をたてて、住民の意見を聞きながら、漸進的に実施するということが重要だと思う。

 その意味では、そうすると、LRTの弱点は、初期投資の大きさと経常的な赤字の発生の問題。これを解決するために初期投資を国や公共が補助する理屈を整理する必要がある。国は理屈に困るとモデル的事業とかいうけど、結局期限付きの事業になるので、財務省に説得的な理屈をたてる必要がある。自分は、地方公共団体の、次世代に対して負担をつけおくりしがちな傾向に対して、国の財政措置によって今、将来的に有効で長持ちする資産をつくる、次世代への負担に対するバイアスを軽減するという意味で、国も市も負担をする必要がある、という説明が一番いいのではないかと思う。

 これに対して、経常的な赤字に対する補助の理屈は難しい。市レベルでは、やはり、社会的な外部経済を固定資産税や都市計画税の増収分を基金化して、投入するという理屈が立つと思う。さらには、現実的に高齢者の利用が盛んであれば、高齢者への交通への福祉施設の代替的な意味として支援するという理屈がたつと思う。

 また、自動車の中心市街地での交通混雑という外部不経済が発生しているのであれば、駐車場の付置義務の緩和に伴う負担金制度の導入とか、トランジットモール化して、そこにどうしても進入しなければいえない自動車に課金するとかいう理屈もあると思う。ただし、国が経常的な赤字を補填する理屈は難しい。経常的な運転は受益が基本的にその市の利用者及びその停留所の周辺に限定されるはずなので、国全体からの税収から補填する理屈は思いつかない。

 この本では簡単に道路財源からの補填を言っているようだが、道路財源自体もなくなってしまったし、仮にあったとしても道路利用者の負担をLRTにつぎ込むというのは、受益と負担の関係がずれてしまっていて、うまく説明がつかない。

 本来の筋は、中心市街地の自動車、バス、タクシーとLRTなどの交通手段を統一的に計画して、中心部とトランジットモール化したり、駐車場の設置を抑制しつつ、公共交通機関の利用を便利にして、かつ、LRTとバスなどが不毛な競争をしたりしないように、市が総合的な調整と運輸連合のような仕組みをつくりあげていって、それぞれが利用者負担で経常的に黒字をだすことが大事だと思う。

 それが経常的に取り組んでもできないのであれば、LRTは当該都市では過大な交通機関という判断をせざるを得ないと考える。

 何度、思考実験をしても同じ結論になって申し訳ない。再度、考えてみる。

 参考論文、都心居住するだけでは自動車依存が改善しないという記述の参考論文 中道久美子ほか「サステナビリティ実現のための自動車依存性に関する研究」(都市計画論文集NO40-3、pp37-42,2005)
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プロフィール

佐々木晶二

Author:佐々木晶二
現役国家公務員(現在研究休職中)です。
早朝、毎日、一冊以上の読書を目指しています。
今は、平日は、都市計画と東日本大震災関係の本を読んでいます。
休日は、海外情報、古典、歴史など、幅広く教養をつけるための本を読んでいます。

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