『コンパクトシティ』を読んで、制度目的に合致した効果をコンパクトシティなるものが実現できるという説得力ある現役の反論求む。 - 革新的国家公務員を目指してー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at the innovative official

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2014/11/05

『コンパクトシティ』を読んで、制度目的に合致した効果をコンパクトシティなるものが実現できるという説得力ある現役の反論求む。


コンパクトシティ実現のための都市計画制度 平成26年改正都市再生法・都市計画法の解説コンパクトシティ実現のための都市計画制度 平成26年改正都市再生法・都市計画法の解説
(2014/10/17)
不明

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 ぎょうせいの中川さんから頂いた。

 都市計画の世界では話題になっている、都市再生特別措置法等に基づく、立地適正化計画制度の立案当局による解説書。自分の後輩たちがつくった制度なので、あんまり批判もしたくないので、気がついた論点をあげておく。

(1)コンパクトな都市構造、コンパクトシティという言葉が、アプリオリにでてくるが、どういう指標でどういう水準になった場合にコンパクトな都市構造というのか、という定量的な基準がどこにもないこと。現状を「じわじわと郊外化」と記述して、DID面積のデータを載せているのが、DID面積が減ることがコンパクト化なのか、その具体的な指標がないと、次に述べる政策目的を実現できるのか、できないのかも判断できない。

(2)都市構造のコンパクト化の必要性として、高齢者や子育て世代にとって安心、健康な生活環境の実現、財政・経済面での持続な経営の確保、環境・エネルギー負荷の低減、自然災害の事前予防の推進、五つの理由があげている。しかし、これがコンパクト化すると、実現するかどうか、についての実証的な検証データが全く示されていない。そもそも、コンパクト化の指標を明確にしていないので、検証しようもないのだろうが、それでは大事な論点が隠れてしまう。

 高齢者の生活環境の維持という観点からは、地域包括ケアとの連携が当然前提になる。この場合には、どのくらいの居住密度であれば、地域包括ケアが自立的に運営できるかが問題となる。
 常識的には、一番、問題になるのは、立地適正化計画が対象としている市街化区域、あるいは、現在のDIDの区域であれば、ぎりぎり医療、介護、福祉サービスは成立するが、その外の農山村集落のような低密度で高齢者が散在している地域をどうするかが課題ではないのか。現実にUR団地で地域包括ケアと連携する事例でも、市街化区域の縁辺部の郊外団地でも検討しているのではないか。

 財政の持続可能性という観点からは、インフラの維持管理の問題一つとっても、一番維持管理が大変な橋のうち、消滅しそうな集落につながる橋のメインテナンスをどうするかが課題になっていて、市街化区域内の橋について今管理を縮小するという話ではないのではないか。また、現時点でほとんどの市町では、市街化区域の外側まで公共下水道事業を実施しているが、これらの処理区域の考え方と、市街化区域の内側に居住誘導区域をつくるという発想と、財政持続性という観点からは矛盾する気もするがどう整理するのか。市町村の財政負担で都市計画関係では下水道が最大なものであることをちゃんと意識してほしいと思う。
 また、都市計画税は市街化区域は全域、さらに公共下水道の処理区域、場合によっては、都市計画区域全域で徴収しているが、これと今回の立地適正化計画はどう整合性をとるのか。そもそも整合性をとらなくても良いというのであれば、どういう理屈で整合性をとらなくてもいいかを市町村担当者に説明した方がいいと思う。

 経済的な持続可能性は言葉もよくわからないし、DID面積が縮小することがそのまま地域経済の持続可能性につながるという理路はよくわからない。是非教えてほしい。

 環境・エネルギー負荷という言葉も、曖昧だが、エネルギー効率という観点では、高層化は縦移動へのエネルギー消費を増やすので、一概にDID人口密度をあげて高層マンションに居住誘導することがエネルギー効率に資するとは限らない。もっと、緻密な議論がいるテーマというのが学識経験者の基本的認識だと思う。緻密な議論を既にしているのであれば、是非、解説書にも書いてほしいと思う。

 自然災害に対する事前予防にコンパクト化、DID面積の縮小がつながる理屈も不明。p11で古くからある集落や市街地は自然災害の危険性が低いと知られていると書いてあるが、今回の広島土砂災害の被災地も古くからある集落。古くからある集落は水の管理などの観点から山筋、沢筋に多く存在しているが、何度も災害にあいながらも、水の管理をしてきた歴史がある。古い集落が安全なら、農山村でこれだけ毎年土砂災害とかにあうはずがない。この必要性の説明はかなり苦しいのではないか。

(3)制度設計上、今回の立地適正化計画は、居住調整区域を除いて、誘導措置(税制や出融資)と届け出勧告制度で支える仕組みになっている。こういうソフトな制度は、今まで、僕たちは、都市再生特別措置法で、まちづくり交付金のように、都市計画区域にかかわらず、柔軟に使えるように制度設計をしてきた。それは、都市計画制度は、規制措置がかかってきて、どうしても、地元住民の合意形成が難しく、地域の実態に即した形に定めることができない欠陥を、誘導措置、助成措置では、その欠陥を突破して、もっと実態に即して、弾力的に使えるように制度設計してきた、先輩たちの努力の結果である。
 しかし、今回の立地適正化計画は、なぜ、市街化区域という都市計画規制の枠内だけで、誘導措置、助成措置を講じようとするのか、わからない。もっと、誘導措置と助成措置だけなら、地域の実態に即した柔軟な指定の仕組みを考えることもできたのではないか。それをしなかった理由はなんだろうか。

(4)制度設計上の疑問のもう一つは、立地適正化計画が市町村マスタープランにみなす、という性格なのに、どうして、都道府県協議とか手続きががんじがらめになっているのはなぜだろう。
 市町村マスタープランは、先輩たちが、うまく制度設計をして、協議手続きなどを定めないことによって、市町村が自由に、定められる、実際にも都市計画区域の外の、行政区域全域を定めるなど、柔軟な使い方がされている。その先輩たちの努力なり成果をきちんと受け止めていたら、こんなに手続きとか施設管理者協議が重くない制度にできなかったのかな。

(5)市町村が行政区域全体を考えて、今後、20年後の市街地を予想するとすれば、昭和3,40年の高度成長期前の姿を想像するといいと思う。大村謙二郎先生も同じ意見だった。
 そうすると、大抵の市町村は駅のまわりにある程度住宅がまとまっていて、あとは、農地と集落が散在している状態の地域構造の市町村が多いと思う。今回、制度設計した誘導措置、助成措置を使っても、基本的には、市街化区域の周辺部や都市計画区域外に集落が散在する地域像を想定している市町村が多いのではないか。
 要するに、周辺部での高齢者の住宅が空き家になりつつも、集落が全部空き家になるのは相当限定的かつ時間がかかり、全体として、うすく集落が散在するようになるはず。それを解決するのがコンパクトシティという発想なのだろうが、そういう高齢化している集落から強制的にまちなかに移住させることは今回の制度にも入っていないし、将来もできないでしょう。
 むしろ、長期間、散在する集落を前提に、相当長期間、都市政策、地域政策から福祉政策、交通政策までを考える必要があると思う。そういう現実と将来像をきちんと見据えて、一つ一つの問題に、市町村の総合力で対応していく、という地道な発想と今回のコンパクトシティの制度設計は矛盾しないもの、それにブレーキをかけないものという説明ができないといけないが、うまくできますか。
 また、p12で、富山市モデルの多極ネットワーク型コンパクトシティが人口5万人以上の地方都市で典型的に当てはまると記述しているが、長期間、集落が散在するという自分の地域構造のイメージとはかけはなれていると思う。人口5万人以上の都市で典型的に多極ネットワーク型コンパクトシティが当てはまるとした具体的な根拠は何でしょうか。是非、市町村の担当者も知りたいと思うので解説書に書いておいたらどうでしょうか。

(6)いろいろ論点はあるが、一番気になるのは、はしばしに社会資本総合交付金の重点化が付言されていること。立地適正化計画が具体的にどのような人口規模の都市でどのように適用できるかは、市町村の具体的な検証作業が必要だと思う。
 ないとは思うけど、交付金が切られそうだからといって、無理に計画づくりで市町村の職員にプレッシャーをかけたりしてませんよね。また、多分、立地適正化計画の策定が難しい中小都市やそもそも都市計画区域を定めていない地方の町村に対して、社会資本総合整備交付金をつけない理屈に、この制度が使われるのは、筋違いだと思いますが、まさか、そんな使い方や市町村説明とかしていなですよね。

 まあ、いろいろ疑問を並べてみたが、是非、制度設計をした後輩たちは、頭の固い先輩の意見を具体的な実証結果と論理で論破してほしいと思う。後輩たちの反論を期待しますよ。

 追記:この本でいいなと思った点。人口推計を社会保障・人口問題研究所の推計を用いると断言している点。市町村が過大な推計をしないためにも国の方針として示すのはいいと思う。また、都市計画税が改良事業などに使えると明記した点。うまく工夫すれば、事実上の維持管理に近い事業にも、都市計画事業という形をとれば使えると言ってもいいと思う。また、公共下水道事業が一段落した市町村では都市計画税の使途に困っているので、その場合には、必要な施設である医療、福祉施設を都市施設として都市計画決定して都市計画事業として実施し、都市計画税を自主財源として充当するといった方がもっとよかったと思う。
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プロフィール

佐々木晶二

Author:佐々木晶二
現役国家公務員(現在研究休職中)です。
早朝、毎日、一冊以上の読書を目指しています。
今は、平日は、都市計画と東日本大震災関係の本を読んでいます。
休日は、海外情報、古典、歴史など、幅広く教養をつけるための本を読んでいます。

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