谷口守『入門都市計画』を読んで、大変ユニークで優れた本だが、違和感を感じる点もある。 - 革新的国家公務員を目指してー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at the innovative official

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2014/12/06

谷口守『入門都市計画』を読んで、大変ユニークで優れた本だが、違和感を感じる点もある。


入門 都市計画-都市の機能とまちづくりの考え方-入門 都市計画-都市の機能とまちづくりの考え方-
(2014/10/21)
谷口守

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 都市計画制度分科会のメンバーでもあり、発言を良く聞いていたので、自分の意見と近いのかなと思っていた。

 この教科書は、従来の制度から説く本とちがって、都市の実態や問題から政策を説くという点で非常に優れていると思う。

 その中で違和感とか疑問を感じた点を列記しておく。なお、この違和感を別にしても、都市計画関係者は必読の書だと思う。

(1)都市的土地利用は自然には自然的土地利用に戻ることは基本的に存在しない。(p16)

 都市的土地利用の定義にもよるが、例えば、郊外団地でほとんど全戸が空き家になる状態までいけば、空き家が朽ちていき雑草が生い茂り、そのうち、別に質の高い緑ではないが、都市的土地利用とはいえない状況に、湿潤な日本の気候ではなるのではないか。それが基本的にないというのは、そこまで、徹底した人の手が入らない状況までなっていなからではないか。農山村集落では、もう離村の結果、自然に戻ってしまったところがたくさんあり、それが都市縁辺部で生じないとはいえないと思う。参考文献、清岡巧未ほか「減少社会における持続可能性からみた空間利用評価」(土木計画学研究・講演集no32,2005)

(2)健康寿命を延ばすうえでも必要な都市サービスまで自動車で頼らないでいける都市づくりが重要です。これは都市の中で医療施設をはじめ、高齢者の利用頻度が高い施設はなるべくコンパクトに公共交通に支えられたエリアにまとめていくことにほかなりません。(p52)

 最近のコンパクトシティの議論の論調だが、厳密な議論が必要だと思う。そもそも郊外や農山村部に住んでいる高齢者をコンパクトで公共交通機関に支えられたエリアにまとめていく、具体的効果のある手法が存在しえないことを前提に考えるべきだと思う。農山村部や郊外団地で住んでいる高齢者は、その住宅をうってその対価でまちなかに住むことは住宅需要の実情から不可能なので、よほどの貯蓄があり、まちなかにも住宅をもう一つ購入できるような世帯でなければ、農山村部や郊外に住み続けざるを得ない。その方々がなくなって自然に農山村部や郊外部が自然的土地利用(これも谷口先生は上記のように戻らないといっているが)になることは、あっても、政策的に融資や税制などの誘導措置程度で、コンパクトな地域に移住するとはマクロとしては考えにくい。むしろ、散在的な市街地、多孔的な都市構造になることを前提にして、対応策を考えるべきだと思う。

(3)大都市でしか成立しえない都市再構築が、都市間の格差を大きくしている可能性は否めません。一部だけ利潤が見込めるからといって大規模開発をして、ほかは利潤が見込めないからといって放置していくと、将来全体としては結果的にかえって大きな負担となってしまいます。(p102)

 この理路もわからない。現在、オフィスなどの業務中枢機能が集中する地区は東京都心など、国際空港の近くで世界都市として発展できる地域に限定されており、そこに集中して、都市の再構築を進めることは、日本経済全体の成長性、効率性をあげることになる。ここに業務中枢が立地しなければ、シンガポールや香港に逃げるだけで東京都心での都市再構築、都市の高度利用を抑制したからといって、日本のその他の地域に立地するわけではないと思う。

(4)スプロール化した市街地の方が太陽光発電の有効利用が高度化した市街地よりはかれるが、スプロール市街地は都市の維持管理コスト、交通弱者の対応からして望ましくないので、スプロール化した市街地には電気料金をあげる政策をとるべき。(p119)

 このあたりになると、そこまでして、なんでスプロール市街地を否定しなければいけないのか全く理解できない。エネルギー効率の面で散在して、かつ、混在している市街地の方が自立分散型のエネルギーシステムに合致するのであれば、地域の自立的に経営をして、インフラの維持コストとか高齢者対応を共助で対応していく方がずっと望ましい市街地の姿だと思う。

(5)サイバー空間が実空間に影響を及ぼすことから、サーバー空間と実空間にトータルベースでのマネジメントが必要。(p122)

 全く意味不明。、むしろ、ネットでものが購入でき、ネットで医師の診断ができることによって、散在型にならざるをえない将来の都市、農山村地域において、生活環境を維持する可能性がでてくるのであって、このネット空間のサービスを実空間に影響するかといってコントロールするというのは、世界的にみてもコンセンサスを得られないし、地域住民のためにもならないと思う。

 最後の市民参加とか、社会関係資本の部分は強く共感する。

 しかし、コンパクトシティの実現が無条件に日本の将来の都市像に望ましいという立論の仕方に無理があると思う。もう少し、緻密かつ地域に即して、かつ、周辺地域の住民の移住の意向、実際に移住を促進するとした場合のそのタイムスパンなどを丁寧にみて、地域ごとの検討すべきで、シーバーツのいうような「間のある都市」という都市像、地域像自体がありえないものとして否定するのは、やや極論だと思う。
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プロフィール

佐々木晶二

Author:佐々木晶二
現役国家公務員(現在研究休職中)です。
早朝、毎日、一冊以上の読書を目指しています。
今は、平日は、都市計画と東日本大震災関係の本を読んでいます。
休日は、海外情報、古典、歴史など、幅広く教養をつけるための本を読んでいます。

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