池内恵『イスラム国の衝撃』を読んで、イスラム政治思想史の観点からきちんとイスラム国家発生の背景をしる必要があると痛感。 - 革新的国家公務員を目指してー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at the innovative official

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2015/02/01

池内恵『イスラム国の衝撃』を読んで、イスラム政治思想史の観点からきちんとイスラム国家発生の背景をしる必要があると痛感。


イスラーム国の衝撃 (文春新書)イスラーム国の衝撃 (文春新書)
(2015/01/20)
池内 恵

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 イスラム国の問題をきちんと勉強する必要があると痛感。日経の経済教室の記事をみて、池内先生の本がいいかなと通勤電車の中でキンドルで読んだ。

 引用部分はあとで列記するが、重要だと思った点。

(1)イスラム国へ集まる若者は志願兵。マスコミがいうように金でつられているのではない。テロに巻き込まれて命が失う可能性があるのに集まるのは、金目当てではあり得ない。

(2)イスラム国に若者が引きつけられるのは、コーランやハーディースに基づいて、正統的な説明の形を借りて、テロや奴隷制など、西欧秩序を否定する思想を語っていること。そして、それ自体は、そもそもマホメットがメディナからメッカ、中東にイスラム国家を広げて行った時の思想そのものなので、正統的であることはまちがいない。逆に、穏健的なイスラム学者がそれに対抗する明確な思想を提示できていない。池内さんはイスラム教にも宗教改革が必要だという。

(3)ただし、イスラム国の経済基盤は脆弱で、これ以上発展して巨大なカリフ制の国家をつくる可能性は低い。ただし、イスラム教国家の政治的な混乱は続く。

(4)なお、イスラム国家が二度のイラク戦争、シリアのアサド政権への攻撃という西欧諸国の一見正統的な行為が、統治機関の不存在な地域を生み出し、そこにテロリストであるグループが初めて領土をもつ国家のような形態を生じさせたことも忘れてはならない。もっとさかのぼれば、中東をフランスとイギリスで分割したサイコス・ピコ協定まで問題はさかのぼる。

 以下、なるほと思った記述。
(1)(位置No. 888-891)
アラブの春」の当面の帰結は、次の四点にまとめられる。  (一)中央政府の揺らぎ  (二)辺境地域における「統治されない空間」の拡大  (三)イスラーム主義穏健派の退潮と過激派の台頭  (四)紛争の宗派主義化、地域への波及、代理戦争化

(2)(位置No. 973-975)
(イスラム国が)シリアとイラクで生じたのは、それぞれの国の中央政府の弱体化が辺境地帯に「統治されない空間」を生み出し、それらの空間が連動して混乱を加速し、さらには結合するという事態だったのである。

(2)(位置No. 1233-1235)
イラクとシリアの間のアルカーイダ系ジハード戦士の往来は、実は、シリア内戦時に始まったことではない。イラク戦争後の反米武装闘争への外国からのジハード戦士の流入の大きな部分は、シリアからだった。そこにはアサド政権の黙認があった。

(3)(位置No. 1322-1325)
銀行からの巨額強奪の話は、その後ニナーワ県知事によって否定され、石油密輸にしても、市場価格の四分の一といった極端なダンピング価格で、ポリタンクやホースのような原始的な設備を用いて細々と取引されているだけである。土着の密輸業者から「イスラーム国」が徴収できる税金は、さらにその一部にすぎない。

(4)(位置No. 1412-1415
少なくとも主観の上では、傭兵ではなく志願兵に近い。志願する目的の普遍的価値や手段の妥当性が、他者から見て承認し得ないものだとしても、そのような個々人の主観や個々人を包む集団の共同主観が前提にあることを認識しなければ、「イスラーム国」のような現象が生じてくる原因を探り、その解消のための適切な方策を考えることはできない。

(5)(位置No. 1727-1730
独裁政権の暴力に頼っている限りは、過激派の発生は止まず、かといって過激派の抑制には、独裁政権を必要とする。このジレンマにアラブ世界は、疲れ切っている。さらに、「アラブの春」によって、そのような独裁政権は意外な脆さを露呈し、暴力による抑制すら不可能になった。

(6)(位置No. 2076-2078)
イスラーム世界にも、宗教テキストの人間主義的な立場からの批判的検討を許し、諸宗教間の平等や、宗教規範の相対化といった観念を採り入れた、宗教改革が求められる時期なのではないだろうか。

(7)(位置No. 2111-2114)
大戦中の一九一六年に、英・仏にロシアも加わって結ばれた秘密の取り決め「サイクスピコ協定」が、英・仏主導の戦後の中東秩序の大枠を示し、そこに現在に至る中東諸国家の機能不全の遠因があることは、繰り返し指摘されてきた。現在、イラク・シリア国境を横断して伸長する「イスラーム国」の集団は、まさにこの「サイクスピコ協定によって画された秩序の打倒」を掲げている。

(7)(位置No. 2227-2229)
「イスラーム国」は、既存のアラブ諸国の国家や国境の不全を露呈させたが、それがアラブ民族の統一国家樹立や、イスラーム教徒の団結による帝国の復活をもたらす可能性は低い。むしろ、さらなる分裂を誘い、第一次世界大戦直後に起きた戦乱の再発をもたらす可能性がある。
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佐々木晶二

Author:佐々木晶二
現役国家公務員(現在研究休職中)です。
早朝、毎日、一冊以上の読書を目指しています。
今は、平日は、都市計画と東日本大震災関係の本を読んでいます。
休日は、海外情報、古典、歴史など、幅広く教養をつけるための本を読んでいます。

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