清水克行『喧嘩両成敗の誕生』を読んで、日本の中世はテロにあけくれていたことを知る。 - 革新的国家公務員を目指してー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at the innovative official

--/--/--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
pagetop

2015/02/11

清水克行『喧嘩両成敗の誕生』を読んで、日本の中世はテロにあけくれていたことを知る。


喧嘩両成敗の誕生 (講談社選書メチエ)喧嘩両成敗の誕生 (講談社選書メチエ)
(2006/02/11)
清水 克行

商品詳細を見る


 確かの池田信夫さんのブログで紹介されていたので購入。どういう文脈で推薦されていたのか失念。

 後半の喧嘩両成敗という法原理が生まれてきた記述もおもしろいが、その前の室町時代の法秩序がない自力救済の時代の状況分析が極めて衝撃的。今の日本からは考えられない。

 まず、公家、武士、僧侶、町人、その他の人々がみな刀で武装していて、通りでの些細なできことですぐに殺傷ざたになる。そうすると、それぞれが属する組織同士の争いにすぐ発展して、それを納めるために天皇の勅許までだしても、それでもおさまらないという事態になる。

 極めて自尊心が高く、それが傷つけられると激高する当時の日本人の姿と、それを法的な秩序ではなく、それぞれの属する共同体同士の争いで決着しようとする自力救済の世界が詳細に資料で描かれていて、今の法秩序に守られていて、なんとなくモラルのいきとどいた日本社会との格差に愕然とする。

 イスラム国家の今の現状と同じだなと思う。要は支配体制がなく、権力機構が自ら法秩序を守れないときの自力救済の社会はテロの繰り返しになるということ。

 この本の本論は、その状況の中で、人々が衡平、相当と考えられる手段として生み出した、人を殺した本人を「切腹」させる方法とか、「下手人」と称して、人を殺した共同体から誰かを差し出して、その「下手人」を殺さずに帰すことで殺戮の連鎖を止める方法などが生まれてきた。しかし、それでも、納得しないとか、激高して「下手人」を殺すなどの事態になると収拾がつかなくなる事態が続いていた。

 そこで、統治機構が整ってきた、戦国時代の武田家や今川家などで採用されたのが喧嘩両成敗法。しかし、この理非によらず双方とも成敗するという原則には例外があって、その場では反撃せずに耐えて、その旨を統治機構に申し出た場合には、一方を成敗する、という規定がついている。

 このことから、著者は、自力救済から、喧嘩両成敗法は、統治機構の判断への誘導するプロセスだったと分析する。

 さらに、江戸時代に入り、100年ぐらいかけて、自力救済の撲滅と喧嘩両成敗という原則の方を非合法化して、法による統治を実現していった。この意味では、時代劇にでてくる「親のかたき~」というシーンも江戸時代は違法だったことがわかる。

 なお、赤穂事件については、吉良が浅野から斬りかかられても手向かいしておらず、当時の法なり法の運用からも浅野だけが処罰されるのが妥当だったが、当時の世間では、まだ、喧嘩両成敗の戦国時代の感覚が残っていて、世間が「片落」(片手落ちの意味)で批判が高まったため、赤穂事件のあと吉良家も断絶するという喧嘩両成敗を行った、という例外的な事件と分析している。

 なお、現在の損害賠償法である過失相殺も、中世から続く痛み分けの思想が反映されているそうで、諸外国の法には存在しないとのこと。

 意外と、中世からの日本人の意識は面々と続いている側面もあると痛感した次第。あと、喧嘩両成敗は、自力救済から法秩序に意向する戦国時代の一部で生じた法だが、江戸時代には制度化されたことはなく、必ずしも一般化した法秩序ではなかったという事実認識も大事だと思う。

 法秩序がなくなると、激高してすぐ斬りかかる、中世のような激情タイプの日本人の性格が受け継がれてないといいと祈るばかり。

 参考文献『法窓夜話』(岩波文庫)
スポンサーサイト
pagetop

コメントの投稿

非公開コメント

pagetop
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
電力使用状況&電気予報
プロフィール

佐々木晶二

Author:佐々木晶二
現役国家公務員(現在研究休職中)です。
早朝、毎日、一冊以上の読書を目指しています。
今は、平日は、都市計画と東日本大震災関係の本を読んでいます。
休日は、海外情報、古典、歴史など、幅広く教養をつけるための本を読んでいます。

FC2カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。