キンドルの日替わりセールかなにかで何気なく購入。
NHKが2012年8月に放送したNHKスペシャルを本にしている。
日本軍がフィリピンで敗走し壊滅状態になったときに、その時点で、中田富太郎という海軍上等機関兵を、当時の海軍刑法では、敵前逃亡でないと死刑にできなかったのに、敵前でなくて、食糧不足で部隊を離れたため、死刑にした事実を、発掘し、その死刑の判断には、東京帝国大学法学部をでた法務官が関与していたことを、詳細な取材の中で明らかにした本。
戦争が始まっても、当初は、法務官は法の正義を守ろうとしたが、敗走して混乱状態になり、兵士が食糧がなくなり、無断で部隊を離れて、食糧探しに脱走するようになると、法の正義もひったくれもなくて、どんどん銃殺していった事実が、当時のフィリピンにはあるらしい。
その後、その法務官たちは、みんな口をつぐって、戦後、弁護士や裁判官など大物になって日本の戦後の司法秩序の中枢にまで駆け上がっている。
この本は、たまたま、馬場東作という法務官が詳細な日記を残していたので、その一端が明らかになった。
また、銃殺された兵士の遺族は、今をもって遺族年金も受け取れず、また、周囲から冷たい視線を浴びながら苦しい生活を送っていることも事実。
法律は社会秩序の上澄みのようなもので、そもそも社会秩序が壊れた戦争状態、特に敗走状態ではあっけなく、法の正義も失われることがよくわかる。
また、東大法学部の先輩たちが、法の正義を守るという理念で海軍や陸軍に入ったものの結局、法の秩序を破る側にまわったという歴史的事実も、自分を顧みる上でも貴重なことだと思う。
ちょっと、法律関係者に紹介したくなったので、書評をアップします。
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