酒井啓子『中東の考え方』を読んで、エッジの効いたわかりやすい中東情勢分析。日本の中東分析者の層は厚い。 - 革新的国家公務員を目指してー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at the innovative official

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2015/02/15

酒井啓子『中東の考え方』を読んで、エッジの効いたわかりやすい中東情勢分析。日本の中東分析者の層は厚い。


<中東>の考え方 (講談社現代新書)<中東>の考え方 (講談社現代新書)
(2010/05/19)
酒井 啓子

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 日垣隆さんが酒井さんは優れた中東分析家といっていたので、キンドルで購入。

 全体を通じて、小気味のよい切り口で分析している。

 なるほどと思った点。なお、個別の引用は最期に列記する。

 第一に、今の中東は、冷戦の残したゴミ、一つは、大量破壊兵器などの高度な武器、もう一つはビンラディーンをはじめとする武器を使える過激派グループ。これはソ連とアメリカの戦いの思わぬ副作用でもあるし、実は、その冷戦をうまく利用してきた中東諸国、エジプトとかサウジアラビアやUAEなどの政府にとっても思わぬ副作用となっていること。

 第二、サウジアラビアやUAEがなんとか秩序を保っているのは、石油収入で、その国民に財をばらまくというレンティア国家となっているため。もちろん、それの恩恵にあずかれない外国人労働者などの不満は高いが、なんとか押さえつけていること。

 第三としては、今のイスラム主義(原理主義はキリスト教徒が自分たちキリスト教徒の原理主義ににていると思ってつけたことばで適切ではない)は、ナセルなどのアラブ民族主義が人気を失って,中東を糾合する思想としてあらわれてきたもの。しかし、同時にイスラム宗教界の象牙の塔の中の思想とも異なり、中東の人々のアイデンティティを自己主張する思想として人気を呼んでいること。別にスカーフをかぶるのも、自己主張の一環で、別に宗教者の意向を踏まえているわけではない。

 その他、重要な点の引用。

(1)(位置No. 446-448)
アメリカはサウディアラビアの石油資源を重視していたが、それ以上にこの地域にソ連が南下し、油田地帯を脅かすことを極端に恐れていた。

(2)(位置No. 554-556)
いずれの国も人口のうち国民だけを数えると、驚くほど少ない。クウェートやカタールでは三割、アラブ首長国連邦で二割にしかならず、残る七、八割は外国人労働者である。

(3)(位置No. 583-585)
こうした産油国政府が、国民から税金を取るのではなく、石油収入を国民にばら撒いて国民の支持を確保する「レンティア国家」の典型例だからである。産油国のように不労所得で成り立つ経済を「レンティア経済」といい、一般的に、レンティア国家では民主化が遅れがちだと論じ

(4)(位置No. 595-597)
エジプトやシリア、イラクなど、いずれも国軍が強化された結果、軍人の政治介入が起こり、アラブ民族主義や社会主義など進歩的思想を掲げて、時の王政を引っくり返した。体制護持を最大目標とするアラビア半島の国々は、軍人のクーデターを恐れて、国軍の育成をあえて避けてきたのである。

(4)(位置No. 1324-1327
「現在中東を含む西アジアが抱える問題は、冷戦が生んだ二つのゴミに起因する。ひとつのゴミは、ソ連から垂れ流される核開発技術や原材料などの大量破壊兵器の拡散で、もうひとつのゴミは、アメリカがソ連の影響力を拡大させないために各地で起用したギャング──ビン・ラーディンやサッダーム・フセインのような──だ」

(5)(位置No. 1447-1452)
隣国の横槍に辟易したイラクのバアス党政権は、七五年、クルド民族主義運動を鎮圧するためにシャーに頭を下げて、対クルド支援を停止してもらう。これが、のちにイラン・イラク戦争の原因にもなった「アルジェ協定」だが、このときイラクはイランに対して領土面で大きく譲歩した(ちなみにクルド勢力は、イランが援助をやめたとたんに、総崩れとなった。当時のクルド民族運動の英雄、ムスタファ・バルザーニーは、イランのシャー政権とCIAの庇護を受け、最初イランに、次にアメリカに亡命して、余生を終えた)。

(6)(位置No. 1527-1530)
実際に、米政権が意図的にソ連にそうした危機感を抱かせて軍事行動を誘発した節は、あちこちに垣間見える。冷戦史の専門家、金成浩氏は著書『アフガン戦争の真実』で、当時カーター政権の大統領補佐官だったブレジンスキーが、「ロシア人たちをアフガニスタンの罠に引っ張り込」み、「モスクワをベトナム戦争(のような泥沼の戦争)に引き込むチャンス」と考えていたことを、明らかにしている。

(7)(位置No. 2070-2073)
外国の手で導入された民主的な選挙によってイスラーム主義勢力が政治舞台に登場したのは、パレスチナだけではない。イラク戦争後のイラクでは、二〇〇五年、米軍の駐留が続くなかで実施された国会選挙で、シーア派系のイスラーム主義政党が二度にわたって圧勝した。彼らもまた、国家が崩壊した瓦礫のなかで、宗教界の社会的影響力を通じて人心をまとめ上げることに成功したのである。

(7)(位置No. 2369-2372)
現代社会は、地域の特性を重視する「ローカル化」と世界を普遍化する「グローバル化」が、同時並行で共存する「グローカル化」が、その特徴であると言われている。中東地域がいま経験しているのは、まさにその「グローカル化」にほかならない。

(参考文献)『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』
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プロフィール

佐々木晶二

Author:佐々木晶二
現役国家公務員(現在研究休職中)です。
早朝、毎日、一冊以上の読書を目指しています。
今は、平日は、都市計画と東日本大震災関係の本を読んでいます。
休日は、海外情報、古典、歴史など、幅広く教養をつけるための本を読んでいます。

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