吉岡明子ほか『イスラーム国の脅威とイラク』を読んで、イラク、シリアの政治情勢まで含んだ、岩波らしい好著。 - 革新的国家公務員を目指してー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at the innovative official

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2015/02/25

吉岡明子ほか『イスラーム国の脅威とイラク』を読んで、イラク、シリアの政治情勢まで含んだ、岩波らしい好著。


「イスラーム国」の脅威とイラク「イスラーム国」の脅威とイラク
(2014/12/26)
酒井 啓子、山尾 大 他

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 新聞の書評でみて購入。これは最近乱造されている、はやわかりイスラーム国というたぐいの本ではなく、中東の専門家が短いながらちゃんとした論考をまとめた論文集。

 なるほどと思った点。

(1)酒井啓子さんは、イラク戦争でアメリカのむちゃくちゃの論理での攻撃がイスラム国を誘発したという単純なシナリオではなく、イラク戦争後、アメリカ政府、オバマ政権が中東政策にいやけをさして、シリア政府に柔軟?な姿勢を示したり、イランとの妥協に走った結果、サウジアラビアとか湾岸諸国(一応、イスラム国とおなじスンニー派)がアメリカを距離をおいて、独自にシーア派に近いシリアに対抗している反政府勢力に支援をした結果、イスラム国が出現してしまったと指摘。特に、サウジなどがアメリカとうまくいっていないという指摘は重要だと思う。(第8章)

(2)山尾大さん:イラクのマリキ政権がシーア派を擁護し、スンニー派を弾圧しためイスラム国が生まれたという単純な分析もあやまり。シーア派も多数に分裂しており、マリキはシーア派の全部から支持されているわけではない。もともと軽い御輿と思ってシーア派が担いだら首相直結の軍隊と司法機関を活用した敵側追い落としでマリキが力をつけて、シーア派からもスンニー派からもクルドからも支持がえられなくなったというのが、きちんとした分析。このマリキに最後通牒をつきつけたのはイラン。(第二章)

(3)吉岡明子さん:クルドは、イラク国内の混乱に乗じて、自分の支配地域に、他の部族も含むクルディスタンという地域に自治権を獲得するとともに、キルクークの油田を支配。この油田収入の販売のために独自にトルコ国境までのパイプラインを作って販売を開始し、イラク政府ともめており、イラク政府は南部油田からあがってきている収入をクルドに配るのを停止するなど圧力をかけている。(第三章)

(4)松永泰行さん:イスラム国のモスル制圧直後から、イランの革命防衛隊が、シーア派といては大切な霊廟(スンニー派としては偶像崇拝として破壊すべきもの)を守るため、イラク領内に展開している。(p261)

 これだけ指摘されていることをまとめても、イランの影響や、ここには頭がきちんと整理できなかったので書かなかったが、シーア派とスンニー派の複雑な宗教対立、さらに、シリアのアサド政権に対するサウジ・湾岸諸国とアメリカのスタンスのずれ、クルドが支配地域を拡大して油田を確保したこと、など、通常のイスラム国本では触れられていない貴重な情報あり。

 そもそも、ブッシュジュニアのイラク戦争ですべての中東秩序が破壊された感じがするが、そうはいっても、今の混乱状況の中で、どうすれば、安定的な国家体制ができあがるか、はっきりとしたシナリオが描けていないのが実情。こんな複雑な宗教、部族、民族が混乱した地域に日本が首を突っ込んだら大変なことになるなという感想を持つ。
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佐々木晶二

Author:佐々木晶二
現役国家公務員(現在研究休職中)です。
早朝、毎日、一冊以上の読書を目指しています。
今は、平日は、都市計画と東日本大震災関係の本を読んでいます。
休日は、海外情報、古典、歴史など、幅広く教養をつけるための本を読んでいます。

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