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2015/04/14

盛山和夫『社会保障が経済を強くする』を読んで、これはかなり異端の論、説得力も疑問。


社会保障が経済を強くする 少子高齢社会の成長戦略 (光文社新書)社会保障が経済を強くする 少子高齢社会の成長戦略 (光文社新書)
(2015/02/17)
盛山 和夫

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 日本の経済学者や財政学者はまじめにとりあっていないのかもしれないが、読んでみるとかなり異端。

 自分なりに納得できなかった部分。

(1)日本の年金制度は、鈴木亘氏が内閣府の報告書でも、相当世代間格差があり、1960年生まれぐらいから若い人は今の賦課方式でいうかぎり、損をするとの指摘がある。http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis290/e_dis281.pdf
 この世代間格差の問題があって、将来年金が維持できないのではないか、という批判が経済学者、財政学者から強く主張されていることに正面から応えていないと思う。これはプロ同士、そして、厚生労働省のきんと詳細なデータを公表して叡智を集めて検証すべきだと思う。

(2)巨額の政府債務について、国民の資産でもあるから心配ないという議論は昔からあるが、社会保障のように現世代で使い切ってしまう予算支出を、将来世代が若い、もしくはまだ生まれていない段階で使い切ってしまうという問題は解決できていないと思う。建設国債は将来世代のために財産を残すのだから、きっと将来世代も納得する使い道だといって、財政法で認められているのに対して、今の70代、80代への社会保障支出を将来世代が償還する赤字国債で手当することが本来適切とは思えない。本来は、現時点での世代間バランスを考えるべきだが、それは結局現在の生産年齢人口に高い税金を課すことになり、それができないので、将来の世代は意見を述べないことから、負担を先送りしているという面は否定できないと思う。

(3)社会保障であってもお金を渡して、消費につながるから経済政策上意味があるというが、本来所得移転は、経済政策上はニュートラル。ただし個別の地域をみれば、特に農山間地域では、社会保障で大都市から配分される年金や介護の支出は他の所得が少ない分、大きな割合をしめており、これをうまく、地域活性化につなげるという発想はありえるし、やるべきだと思う。しかし、マクロでみれば、その半分の原資である付加価値とそこからの税金はどこから生みだすのかといえば、それは社会保障ではなくて、純粋に、大都市での経済活動にほかならない。その意味で、社会保障自体が日本のマクロ経済で成長要因になるとは考えられない。

(4)国債の発行も低金利で大部分は国内で消化されているから心配ないという議論も、既に約1割が海外で消化され、今後、海外での消化が増えていくこと、世界中で実需を越えた資金循環が生じており、いつ、不足の自体で国債が売られ金利高騰するかわからない、不安定な金融事情であることをよく考える必要がある。この失敗を繰り返してきたからこそ、ドイツは憲法で均衡財政をうたい、メルケルはそれを今年度実現して国債発行ゼロで予算を組んで見せた。そこを心配ないかのような言説もミスリードだと思う。

(5)小生は、経済社会の安定と生活の安定のためには、低所得の若者、金融資産など資産を有しない高齢者などを社会的弱者に対して、幸福な生活を送れるだけの医療、介護などの社会保障システムをきちんと構築することは重要だと思う。しかし、それは経済成長に役立つためではなく、経済社会の安定のため不可欠だからと考える。そのためには、現在の若者もその社会保障システムが持続可能であることを得心できるよう、様々な観点から検証を行い、やはり今のママでは持続不可能なのであれば、現在の高齢者から給付を切り下げていくことも必要だと思う。これらの問題は、結局、詳細な情報開示と適切な経済成長の前提(3%とか高い成長率を前提にしないこと)、国民年金と厚生年金、共済年金のお金のやりとりを不明確にする基礎年金のような仕組みで事実上、厚生年金等で国民年金を支えるといった、受益と負担のはっきしない仕組みではなく、本来保険制度なのだから、ちゃんと受益と負担の関係を明確にしつつ、低所得の部分には、税財源をあてるなど、普通の議論を広くしてほしい。

 以上のコメントは小生は社会保障の専門でないので、感覚的かつ従来勉強してきた知識でコメントしたものだが、きちんとした、かつ、明朗でオープンな議論が、医療財政、介護財政、年金財政において行われることを是非お願いしたい。その結果であれば、高齢者も給付が減っても納得するし、勤労者たちも税金が増えても仕方ないと思う。

 開かれたオープンな議論と、国民へのわかりやすい説明を是非期待したい。社会保障は、学術会議とか議論してみてほしい大問題だと思う。
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No title

年金については同著者で『年金問題の正しい考え方―福祉国家は持続可能か』がありますので、そちらを読んでみるべきでしょうね。

鈴木亘氏の議論には強い批判があり、現行の賦課方式の年金を積立方式の年金制度のロジックで批判した錯誤があるようです。

>受益と負担のはっきしない仕組みではなく、本来保険制度なのだから
この認識が年金に関する議論の混乱の源であることを権丈善一氏は批判していますね。そもそも現行の基礎年金は保険制度ではないので、本来保険だから云々という議論そのものがミスリーディングだということのようです(保険という名称を付けたのは単なる当時の厚生省のミス)

ブログ主さんの年金に関する知識は従来マスコミで盛んに喧伝されてきたものをベースにしているようですが、それらは制度に対する理解が乏しい経済学者が誤解と勘違いの上で作り上げた虚構ではないかと思います。

労働政策論で著名な濱口桂一郎氏の『年金時代』2012年5月号の文章
http://homepage3.nifty.com/hamachan/nenkinjidai1205.html
(権丈氏のブログより転載)

ブログ主さんの文章を読んで感じた違和感は社会保障=現金給付、所得移転と捉えている部分です。医療、介護、教育、保育などの対人社会サービスの現物給付であれば、雇用が増えるわけで、その分確実にGDPは成長することになります。需要不足による労働力余剰が日本の長期停滞の正体だと思いますが、容易にこれが解消できないだろう状況では社会保障による財政拡大が需要不足を解消して経済を回復させる側面は軽視できないと思います。もちろん公共事業もそのような効果をもっているわけですが、公共事業で解消できる需要不足も限界があると思いますので、両面でやる価値はあるでしょう。

構造的に長期の需要不足に先進国が陥っている可能性については最近サマーズやクルーグマンが「長期停滞」として言及しているようです。
日本経済に関する実証研究としては
須藤時仁,野村容康著
『日本経済の構造変化  長期停滞からなぜ抜け出せないのか 』
が個人的には参考になりました。

国債については学者によって言うことに隔たりがあって、結局理論的にまだ未解明なのではないかと思います。ただ、財政法の建設国債、赤字国債の区別は会計上の区分にすぎず、マクロ経済上の財政の持続可能性とは別次元ではないでしょうか。

短期的には国債発行でしのぎつつ、長期的にはゆるやかに増税していくことを前提とするのであれば、盛山氏の議論は穏当なものと評価できると思います。ただ、そのための政治的コストこそ最大の問題のように感じられますが。。。
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プロフィール

佐々木晶二

Author:佐々木晶二
現役国家公務員(現在研究休職中)です。
早朝、毎日、一冊以上の読書を目指しています。
今は、平日は、都市計画と東日本大震災関係の本を読んでいます。
休日は、海外情報、古典、歴史など、幅広く教養をつけるための本を読んでいます。

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