山本理顕『権力の空間/空間の権力』を読んで、建築家からの社会思想史への挑戦だね。 - 革新的国家公務員を目指してー自由と民主主義を信じ国益を考えるーAiming at the innovative official

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2015/04/19

山本理顕『権力の空間/空間の権力』を読んで、建築家からの社会思想史への挑戦だね。


権力の空間/空間の権力 個人と国家の〈あいだ〉を設計せよ (講談社選書メチエ)権力の空間/空間の権力 個人と国家の〈あいだ〉を設計せよ (講談社選書メチエ)
(2015/04/11)
山本 理顕

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 国土交通省の本屋で平積みになっていて、なにげなく手にとったら面白そうだったので購入。

 建築家の山本先生が、丁寧にハンナ・アーレントを読み解いて、彼女からの個人に閉じた住宅設計批判を真摯に受け止めて、最後に地域社会圏主義につなげている。

 地域社会圏主義の本は一昨年ぐらいに読んだ。http://shoji1217.blog52.fc2.com/blog-entry-901.html

 住宅と行政が管理する公共空間の間の半公共的な空間の重要性について、ギリシャのアンドロニティスという住戸内の空間(p22)、日本の民家の閾の空間(p54)を説明したうえで、労働者の結び付きを断ち切る労働者住宅の事例(p74)、そして現在の日本の住宅設計が、外との関係性を否定している性格を有していることを厳しく批判している。
 また、邑楽町のレゴのように建築設計案を変更できる仕組みで、住民参加による合意形成、住民参加型の建築設計の動きや活動は大変すばらしいと思う。(p201)

 それについては全く同感だし、逆に、地域との関係性をたくましくする、地域社会圏主義にも共感を覚える。

 その上であえて、違和感を感じた、もしかしたら筆が走ってしまっている点をいくつかあげる。

(1)第4章では、東京都都市整備局の都営住宅基本設計が1万円で落札されるなど、公営住宅部局が公営住宅の基本設計をおざなりにしている点から、官僚制的管理空間の批判をしている。もちろん、公営住宅の基本設計がおざなりであっていいはずがないし、今のような住宅の標準的な間取りを使っていて、高齢化時代の孤独死に対応できるのか、など問題点は十分理解できる。

 しかし、これは、行政、官僚制の問題というよりも、標準設計で設計料を下げようとする民間デベロッパーでもあちこちで発生しているのではないか。公営住宅はむしろ特殊な事例で、某H工務店のように板状のマンションを低価格で供給している民間デベロッパーなどでは基本設計などほとんどちゃんとしていないのではないか。標準化、大量生産の住宅産業の仕組み自体の問題ではないのか。また、それを一律に問題と言えるのか。

 公営住宅政策については、コスト縮減が厳しく担当者に問われている(政治家に人気のある政策でないため)状況にあるのは事実なので、建築家として、低コストで質の高い公営住宅設計の方向性をしめすべきではないか。もちろん、もっと民間の空き家を活用して借り上げ公営住宅を進めることも大事だが、それ以外に建て替えの時の低コストで人間の関係性が確保できる建築設計の提案がほしい。役人を非難するだけでは問題は解決しない。

(2)地域社会圏主義に対して、上野千鶴子氏が「福祉の現場ではありものを使った民家活用にも場所を上手につくっているものもあって建物なんか関係ないという気分になります」(p244)という批判を加えたことに対して、多くの人がそう感じるのは、福祉施設と他の施設が行政の縦割りで空間がカテゴライズされているからだと、分析している。

 もちろん、小生は、公共建築物は複合的な機能を持つべきだし、そもそも所管法の縦割りなど打破すべきだと思うが、上野氏の指摘はもう少し深いものがあると思う。

 要は、福祉事業のように、補助金と保険だのみの事業は、当初の投資をたくさんやっていては、事業が成り立たない、特に、低所得者用のサービスは成立しない、そこで、既存の住宅などをうまく使って(これは建築基準法とか消防法の課題があることは十分理解している)、ビジネスを成立させている、そういう既存のできあがった市街地で、人の関係性を取り戻す手法として、地域社会圏主義で提案されているものは、適用できないのではないか、という指摘だと思う。

 その指摘については、行政の縦割りとか、いわば論点をずらすのではなく、正面から、既にできあがっている住宅市街地の中で地域社会圏を、初期投資が少なく、福祉側の事業が成立するようにどう立ち上げていくのか、を経営の観点まで含めて検討する必要があると思う。

 あえて、気になることを列記したが、建築家が政治学者のアーレントを読みこなして、ここまで深く、住宅設計への指針を読み取った山本先生の知見には敬意を表する。大学の法学部とか経済学部をでた後輩たちが、ここまでアーレントを読んでいるだろうか。そもそもアーレントを知らないなどという後輩がいないことを祈る。まず、アーレントを読んでなければ、アーレントは結構文章が難解なので、この本をとっかかりに、「人間の条件」とか読み進めるといいかもしれない。

 参考文献。基本書ばかりではずかしいが読んでいないので列記。原広司『空間ー機能から様相へ』(岩波現代文庫)、藤井明『集落が育てる設計図』(LIXIL出版)
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プロフィール

佐々木晶二

Author:佐々木晶二
現役国家公務員(現在研究休職中)です。
早朝、毎日、一冊以上の読書を目指しています。
今は、平日は、都市計画と東日本大震災関係の本を読んでいます。
休日は、海外情報、古典、歴史など、幅広く教養をつけるための本を読んでいます。

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